ウソをつけないから、役を〝生きる〟 横浜流星、不器用役者の大河主演への道
必死、決死、本物 脱獄囚の緊迫感
俳優にはさまざまなタイプがおり、一瞬でその人物に「なれる」あるいはそう「見せられる」器用な者もいる。対して本人は「自分はそうなれない。だから役を生きるために必要な作業をやっているだけ」と自己分析していた。それにしたって努力の枠を超えていると個人的には思うが、だからこそ我々は彼の芝居に対して〝ウソ〟を感じないのだろう。 全て必死で、決死で、本物。その横浜が日本中から追われる脱獄囚に扮したなら、臨場感と緊迫感はすさまじいものになるはず。「正体」の劇中でも、人付き合いを極端に避ける現場作業員、ナイーブなフリーライター、落ち着いた介護職員とさまざまな顔を見せるが、その奥には「ある目的のために動いている死刑囚」が通底している。その正体が垣間見えるとき、周囲からの印象が一変する――という部分も含めて、横浜の演技がもたらした貢献度はあまりにも大きい。 24年は「正体」に続いて韓国の人気ドラマを日本でリメークした「わかっていても the shapes of love」が12月9日よりABEMAやNetflixにて配信。翌25年には「べらぼう」に加えて、吉田修一の長編小説を李監督、吉沢亮との共演で映画化した「国宝」が控えている横浜。不器用かつ武骨な表現者でありながら多くのクリエーターに愛され、人々を魅了し、破竹の勢いを見せる希有(けう)な存在は、25年もさらなる境地を見せてくれることだろう。
映画ライター SYO