「歴史が変わる瞬間」 ラグビーリーグワンで女性初の主審に アルカス熊谷の桑井亜乃さん きょう22日、狭山―昭島戦で
ラグビーリーグワンは21日、シーズンが開幕。男子15人制で国内最高峰の舞台に初めて、女性レフェリーが挑む。埼玉県熊谷市に活動拠点を置く女子チーム、アルカス熊谷所属の桑井亜乃さん(35)だ。栃木県足利市の足利ガスグラウンドで22日午後1時にキックオフされるディビジョン3の第1節、狭山セコムラガッツ―クリタウォーターガッシュ昭島戦で主審としてデビュー。桑井さんは「歴史が変わる瞬間。ほかの女性たちも、後に続いてほしい」と願っている。 パリ五輪のレフェリー団に選出されていた桑井さん【写真1枚】 11月21日、リーグのパネルレフェリー14人が発表され、桑井さんは女性で唯一名を連ねた。リーグワンによると、女性レフェリーが男子15人制でトップカテゴリーの国内大会を裁くのは、リーグワン創設以前の全国社会人大会やトップリーグ時代を含めても過去に例がないという。 桑井さんは7人制女子日本代表として、2016年のリオデジャネイロ五輪に出場した。21年の東京五輪で代表入りを逃すと、引退してレフェリーに転身。わずか3年で今夏のパリ五輪の7人制女子レフェリー団に選ばれた。 選手とレフェリーの両方で五輪に参加するのは、ラグビーでは世界初の快挙。主審2試合を含む10試合を受け持った。「7人制のレフェリーは、オリンピックで区切りにしようと思っていた」と桑井さん。五輪後の人生プランを描く中で、「15人制にチャレンジするのであれば、勢いがある今のうち。男子のトップレベルで、女性初のレフェリーを目指そう」と決めた。 五輪の7人制は7分ハーフで行われるが、リーグワンの試合時間は40分ハーフだ。リーグワンのチーム同士の練習試合で笛を吹き、桑井さんは「私が強みとする速さは問題ない。長い距離を走れる体づくりに力を入れた」と振り返る。15人制では1試合で8キロ以上の距離を走り、終盤は足がつるほどだという。 当初は7人制と15人制のルールの違いや、プレーを見やすい適切な位置取りにも戸惑った。だが、10月に担当した2戦目となる練習試合で、早くも手応えをつかんだ。 理想とするレフェリングは、ブレがない一貫性ある判定を素早く下すこと。桑井さんは「入りの15~20分ぐらいで、私の基準を選手たちに分かってもらえるようにしたい。レフェリーが目立たず、何事もなく終わるのが一番。観客が、『そういえば今日のレフェリーは女性だったね』と後になって気付くぐらいになれば」と求める姿を語る。 リーグワンはディビジョン1~3の3部制で開催し、桑井さんは3部に当たるディビジョン3からスタート。レフェリーは試合だけではなく、日常のトレーニングや終了後に課題を振り返るミーティングなど、選手よりも多くの時間をささげている。「人生を懸けているのは、レフェリーも選手と同じ。トップを目指して、一年一年勝負したい」と桑井さん。ディビジョン1のピッチに立つことを目標に、新たな道を切り開く。