JRが“リニア開業”より“夜行列車の復活”を優先すべき理由「廃止が相次いだ当時と状況が大きく異なる」
品川22:30発、高山6:30着の列車が通れば…
高山市の例のように、夜行列車が運行すれば、現状ではアクセスに難のあるエリアにも外国人訪問者が足を運ぶチャンスを増やせる。そうなると、まだ見ぬ日本の名所に足を運ぶようになるのではないだろうか。 また、夜行列車を利用すればホテル代が節約できることはもちろん、時間を有効活用することでより多くの街を回ることができる。 たとえば、東京を出て、名古屋で高山(岐阜)方面と同じく外国人観光客が多く訪れる京都を経由し、奈良に向かう列車と分離する多層建て夜行列車を通すとしよう。 相応の速度で在来線を走らせた場合、東京-高山、東京-京都ー奈良も8時間となる。東京駅は車両を長時間留置できないので、ホームに余裕のある品川始終着で設定した場合、時刻表は下記のようになる。 【下り】 品川22:30発→高山6:30着、奈良6:30着 下りの品川駅では20:00くらいから車両を停めておき、奈良は9:00くらいまで停めておき、好きなタイミングで乗車・下車できるようにする。この理由は後述する。 【上り】 高山22:30発、奈良22:30発、京都23:30発。品川6:30着 高山・奈良は20:00くらいから、品川は9:00くらいまで停めておき、好きなタイミングで乗車・下車できるようにする。 ホームに長時間留置して好きなタイミングで乗車・下車できるようにする理由は、出かけるタイミングを乗客に自由に決めてもらうためだ。特にホテル代わりに夜行列車を利用する外国人観光客や子供連れを中心に重宝されるだろう。このようなサービスは海外の夜行列車に多く見られる。
ヨーロッパで夜行列車の需要が回復している理由
さて、なぜヨーロッパで夜行列車が復活しているのか。それは環境面への配慮からだ。環境面を理由として移動手段を選択するというのは日本ではまだあまり馴染みのない考え方だろう。 しかし、特に欧州においてはカーボンニュートラルの観点から飛行機やバスは忌避されるようになってきている。フランスにおいては、2時間半以内の飛行機移動が禁止にされるなど、日本とは比べ物にならないほど環境に配慮する意識が高い。 フランスでは飛行機に乗ること(=環境破壊に加担すること)を恥とし、鉄道など他の移動手段をすすめることを指す「flight shame」という単語すらあるほどだ。 そんな中で鉄道はエコな乗り物として認知されている。実際に鉄道によって排出される二酸化炭素(CO2)は飛行機の5分の1以下となっている。 日本で夜行列車の運行が増えれば、国内各地のアクセシビリティの向上だけでなく、環境面での優位性からも外国人訪問者が移動手段として選択する可能性は非常に高いのだ。