JRが“リニア開業”より“夜行列車の復活”を優先すべき理由「廃止が相次いだ当時と状況が大きく異なる」
マイナーな都市の需要が高まっていた
もう一つ、興味深いデータとして、外国人旅行者の訪問先のデータがある。 「インバウンド需要」と聞くと東京や大阪といった大都市に需要が集中していると思う人もいるだろう。しかし、実際に日本を訪れた外国人の足取りをよく見てみるとマイナーな都市の需要も非常に高いことがわかるのだ。 ナビタイムジャパンが提供する訪日外国人向けに展開するアプリ「ジャパントラベル・バイ・ナビタイム」のデータ分析によると、外国人訪問数の伸び率の高い市町村別は、北海道や山形県、茨城県などの太平洋ベルトから外れたエリアなのだ。 訪日外国人数伸び率トップ100市町村(2019年と2023年の1月~5月を比較。ナビタイムジャパン調べ) 第1位:北海道当別町 第2位:山形県高畠町 第3位:茨城県北茨城市 第4位:秋田県能代市 第5位:新潟県見附市 つまり、これまでは訪れなかった土地に外国人旅行者は目を向け始めているのである。
「日本の夜行列車」には引きがある?
さらに追い風なのは外国人観光客の多くが夜行列車に対して好意的であるという点だ。 例えば現在唯一運行しているサンライズ出雲利用者のYouTube動画は8700万回以上再生されており、海外からのコメントが多いのが特徴。外国人は「日本の夜行列車」に強い興味を持っていることが伺い知れる。
「アクセスがよくない」高山市がさらに伸びる可能性も
ここで一つ“夜行列車需要”が高く見込めるエリアの例を出そう。 リニアで注目を集めたJR東海の営業エリアの中にも大きなインバウンド需要を生んでいる地域ーー岐阜県の高山市だ。 なんと、高山市ではコロナ禍前では人口の7倍にあたる約473万人の観光客が年間で訪れており、そのうち約61万人が外国人観光客となっている。現在はさらに多くの人が訪れている可能性も高い。 しかし、現状ではアクセスに優れているとは言い難い。東京駅からは新幹線から名古屋で在来線に乗り継ぎ、約4時間30分かかる。 だが、高山を訪れたい外国人観光客は少なくない。事実、以前筆者が特急ひだに乗車して高山を訪れた際は車内は日本人より外国人乗客の方が圧倒的に多いという状態だった。 となると、夜行列車1本で目的地に向かえるとするならば、その地域を訪れる外国人観光客は増える見込みがあるということである。