JRが“リニア開業”より“夜行列車の復活”を優先すべき理由「廃止が相次いだ当時と状況が大きく異なる」
国内で稼働しているのは「サンライズ瀬戸・出雲」のみ
現在国内の夜行列車はほぼ廃止されている。唯一稼働しているのは東京―高松・出雲市間を走る「サンライズ瀬戸・出雲」のみである。 「7両+7両編成」で316人が乗れるこの「サンライズ瀬戸・出雲」は、満席になる日が少なくないものの、現在の車両は約25年前から使われており、後継車両の予定が現状ではないため、老朽化に伴っていつ廃止になってもおかしくはないという状況。 1964年に東海道新幹線は開通した後、1970年代が国内の夜行列車の全盛期と言われており、それから徐々に廃止が進み、2000年代に入ってからその流れは特に顕著だ大きな要因のひとつとして他の選択肢が増えたことがある。新幹線のほか、規制緩和によって格安高速バスやLCCというライバルが登場し、そこに車両の老朽化も重なってしまった。
廃止が相次いだ当時と状況が大きく異なる
ここまでの話を聞いて「夜行列車は過去のものだろう」と思った人も少なくないだろう。しかし、ここで注目すべきなのは寝台特急あさかぜや寝台急行銀河、快速ムーンライトながらなど夜行列車が次々と廃止になった2000年代当時と、2024年現在では国内の状況が全く異なっているということだ。 廃止が続いた当時の夜行列車は国内需要のみを想定していたが、今は非常に強いインバウンド需要がある。 法務省出入国管理統計の調べによると、インバウンド観光客は夜行列車全盛期の1976年からコロナ禍直前の2019年までの43年間で約30倍に膨らんでおり、約3188万人となっている。2000年の約476万人から見ても6.5倍に増えている計算だ。 コロナ禍が明け、国内のインバウンドも戻ってきた段階だが、そんな外国人観光客と夜行列車は非常に相性がよいのだ。 それを裏付けるように、観光庁の調べによると、訪日中に利用した交通機関は、全国的には新幹線以外の鉄道が70%と高く、ついで、バス、新幹線、タクシーで、レンタカーは12%だった。 鉄道が通る場所は、観光客誘致に有利。この論が正しいことは確かだ。