7年ぶり自己新でマラソン初優勝!安藤友香「絶対に勝ちたい」を実現 パリ届かずも「今日をスタートに次の目標に向けてがんばりたい」/名古屋ウィメンズマラソン
◇名古屋ウィメンズマラソン(3月10日/バンテリンドーム ナゴヤ前スタート―名古屋市内―バンテリンドーム ナゴヤ前フィニッシュ) 安藤は日本歴代8位 女子マラソン歴代10傑をチェック! パリ五輪MGCファイナルチャレンジを兼ねた名古屋ウィメンズマラソンが行われ、安藤友香(ワコール)が日本人トップの2時間21分18秒で優勝した。 パリ五輪代表入りに必要な設定記録(2時間18分59秒)には届かなかった。だが、それでも安藤は力を出し尽くした。 ペースメーカーは1km3分18秒ペース、フィニッシュ2時間19分15秒で30kmまで引っ張る設定。1月末の大阪国際女子で出した前田穂南(天満屋)の日本記録を更新するためには、30km以降のペースアップが求められる。 厳しい条件の中でのレースだったが、「強い選手たちの力を借りて走ろう」と安藤は、ペースメーカーのすぐ後ろにつけた位置をキープし、鈴木亜由子(日本郵政グループ)、加世田梨花(ダイハツ)とともに集団の中で無駄な動きをしない。 入りの1kmは3分19秒、5km通過は16分28秒までは予定通り。だが、そこから向かい風や細かなアップダウンの影響もあって、パリ五輪の目標ペースを下回っていく。中間点通過は1時間9分56秒。25km過ぎに鈴木が集団から離れ、そして安藤と加世田も26km過ぎに徐々に遅れ始めた。 「ここが一番きつくなった場面」と振り返る安藤。パリが遠ざかりつつあることを実感しつつも、前を見つめることはあきらめない。「加世田選手もいたので、一緒に行こうという気持ちで」走り続けた。 すると、徐々に先頭を争う22年オレゴン世界選手権女王のゴディトム・ゲブレシラシエ(エチオピア)と、23年杭州アジア大会金メダルのユニスチェビー・チュンバ(バーレーン)の背中が近づいてくる。35kmを過ぎて、ゲブレシラシエが途中棄権。チュンバのペースもあきらかに鈍った。 38km過ぎ、安藤はついにトップに並ぶ。そこから後ろについたり、並んだりを繰り返した。「最後は絶対に優勝したい」。その強い気持ちが疲労困憊の身体を突き動かす。 そして、残り700m。安藤がスパートし、チュンバを突き放した。そのまま逃げ切り、万感のフィニッシュ。「パリは行けないけど、7年ぶりに自己ベストを更新し、優勝することができてよかった」。安藤は晴れやかな表情で振り返った。 スズキAC時代の2017年のこの大会で2時間21分36秒の初マラソン日本最高をマークする、衝撃のマラソンデビューを飾った。同年のロンドン世界陸上にも出場(17位)している。 だがその後は、なかなか記録を更新することができなかった。東京五輪もマラソンでの代表入りを逃す。10000mで出場はしたものの、マラソンへの強い思いは消えない。 そこから2020年、22年の名古屋ウィメンズ、23年大阪国際と3レース続けて2時間22分台をマークするなど安定感に磨きがかかった。その間も含めて、「たくさんの人にお世話になった」と振り返り、この日も「一人ひとりの顔が浮かんで今日は走ることができた」と言う。 7年かけて自分を超え、マラソンで念願の優勝も飾った。マラソンでパリ五輪の夢はかなえられなかったが、「今日をスタートにまた新たな気持ちで、次の目標に向けてがんばりたい」と安藤。壁を乗り越えたアスリートの笑顔が輝いた。
月陸編集部