警視庁の重要犯罪が検挙率100%超! 23区内の繁華街は、防犯カメラの死角がゼロとも言われる「防カメ」の真相とは
---------- 30年を超える記者生活で警察庁・警視庁・大阪府警をはじめ全国の警察に深い人脈を築き、重大事件を追ってきた記者・甲斐竜一朗が明らかにする刑事捜査の最前線。最新著書『刑事捜査の最前線』より一部を連載形式で紹介! 宅配業者を装った男がグサリ! 犯人を追い詰めたのは「防犯カメラ」と刑事の足だった 前編記事<宅配業者を装った男がグサリ! 犯人を追い詰めたのは「防犯カメラ」と刑事の足だった> ----------
防カメ効果で検挙率100%超
殺人など強行犯の捜査本部事件は、発生後3週間で犯人につながる糸口が見つからないと長期化すると言われる。時間がたつと目撃者の記憶は薄れ社会の関心も低くなり、証拠も散逸する可能性が高くなる。初動捜査で捜査員を大量動員して解決への端緒をつかむのが定石だ。 初動捜査は、現場周辺で情報を集める「地取り」が長らく中心だったが、現在の中核は防犯カメラの画像捜査(防カメ捜査)だ。「DNA型」「指紋」と並び捜査における“三種の神器”とされる。防犯カメラの設置密度の飛躍的な高まりを受け、画像捜査が果たす役割の大きさは計り知れない。 警視庁は2009年4月、データの収集や解析を一元的に行う捜査支援分析センターを全国に先駆けて発足させた。防犯カメラの記憶媒体の性能向上に呼応するように、センターの防カメ捜査も進化し、そのノウハウは警視庁全体に浸透していった。 目黒区の殺人事件が起きた2011年の8月に警視総監に就任した樋口建史は捜査の効率化と強化のため、防犯カメラの設置促進とDNA型の資料採取を全庁的に推進した。 署長会議のたびに、防犯カメラが各警察署管内の街角、駅、商業施設のどこに設置されているのかをくまなく調べて地図に落とすよう求めた。さらに管内の地図でカメラが射程に捉えているエリアを斜線でつぶし、白地で残った地域をカバーするため都庁や区役所、商店会にカメラの設置を要請するよう指示した。 樋口が退任後の2018年に警視庁に確認すると、23区内の繁華街は防犯カメラの死角が解消されていたという。 防犯カメラのリレー捜査は、事件が発生すると付近の防犯カメラの画像で疑わしい人物や車両を特定した上で、同じ人物や車が写っていないかさらに周辺のカメラをチェックして逃走方向を絞り込み、追跡していく。 犯人が駅に入れば構内カメラでいくらの乗車券を買ったかが分かるため、次にその乗車券で行ける範囲にある駅の改札のカメラを調べる。写っていれば容疑者の自宅の最寄り駅の可能性があるため、現れるのを待ち構えて職務質問するという流れが一例だ。防犯カメラの設置密度が高い都市部では、確実に犯人に迫ることができる。