航空機事故で死亡する確率は「毎年約7%下がり10年ごとに半分に」米MIT検証
スイス科学誌「心理学の最前線」に掲載された論文によると、「飛行機恐怖症」は非常に一般的な不安症で、40%もの人が経験している。中国系動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」では、激しい乱気流の動画が瞬く間に広まった。また、今年1月に米アラスカ航空で起きた米航空機大手ボーイング製の機体の一部が飛行中に吹き飛んだ事故や滑走路での航空機同士の異常接近、ブラジル・サンパウロ近郊で8月に起きた旅客機墜落事故といったニュースを目にすれば、飛行機恐怖症に陥る旅行者が増えるのも無理もない。 では、飛行機の旅は本当に安全だと言えるのだろうか? オランダの専門誌「航空輸送管理ジャーナル(JATM)」は、米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者が執筆した論文を掲載した。それによると、飛行機の安全性は世界的に年々向上し続けており、2018~22年に民間機の飛行で死亡する確率は、世界全体で1370万回の搭乗につき1回の割合だった。この確率は、1968~77年には35万回の搭乗につき1回だったのに対し、2008~17年には790万回につき1回と大幅に減少している。 航空機の安全運航研究の第一人者で、同論文の共著者であるMITスローン経営大学院のアーノルド・バーネット統計学教授は、次のように述べた。「あなたは、これ以上下げることのできない、ある一定のリスク水準があると思うかもしれない。ところが実際には、空の旅で死亡する確率は毎年約7%ずつ下がり、10年ごとに半分になり続けているのだ」 この研究は、米飛行安全財団(FSF)、世界銀行、国際航空運送協会(IATA)のデータに基づいている。論文の著者らは、全世界で2020年3月~22年12月までの間に航空機内で新型コロナウイルスに感染して約4760人が死亡したことを指摘し、同ウイルスが航空機搭乗の安全性に与える影響についても論じた。 著者らは、航空機の安全性が高まる傾向は「ムーアの法則」を通じて理解できると説明。これは、およそ18カ月ごとに半導体の処理能力が2倍になるという法則だ。民間機の場合では、1960年代後半から10年ごとに安全性が約2倍ずつ増している。