人気“鍛キャビ”13モデルを計測して分かった!今どきの「重心距離」の正解は?/'24鍛キャビ研究#2
今から35年以上前のダンロップ製アイアン「PRO MODEL DP-201」(左・1988年)と「PRO MODEL DP-301」(右・1989年)のカタログ画像。現在のアイアンと比してネックやソケットが長く、フェース面上重心点(イメージ)は現代のアイアンよりもヒール寄り高め。 「これをどう使うかがプロの技でした。しっかりミートして飛ばしたり、意図的に重心点を外してスライスやフックを打ったりしてボールをコントロールしていたんです。現在とは異なる高等技術です」
弾道計測器の発達がアイアン設計にも影響する
当時のプロは研ぎ澄まされた感覚と経験値によってアイアンの球筋を作っていた。しかし現在は事情が異なるという。 「ご存じのように、今は弾道測定器が発達して普及し、効率の良いスイングメソッドが世界的にある程度共通化されてきました。クラブの軌道とフェース向きで弾道をコントロールする技術で、これが最も効率的で再現性も高いことが分かってきました。そしてそのスイングをするには重心距離の長い、スイング中にフェースの向きが変わりにくいクラブが是とされてきているんです。つまり、重心距離が長めのモデルが今どきということです」
外ブラ勢の進化はすごい
今どきクラブの先頭を突っ走るのは、やはり外ブラ勢。なかでもピンは一貫して重心距離の長いクラブを作り続けてきた。 「かつては『ピンに染まったらピン以外は使えない』といった感じでしたが、今は時代がピンに追い付いてきた感じがします。大慣性モーメントでミスに強く、重心が遠くにあるためヘッドがブレにくい。こういうクラブをうまく使うと効率的な球が打てることが分かってきたので、ピンのシェアが増えてきたのだと思います」。 ピンのツアー系キャビティアイアンを見てみよう。
i230は鍛造アイアンではないが、現時点において見逃せない性能を有するために登場させた。
「i230とBLUEPRINT S、両モデルともに重心距離が長く、慣性モーメントが大きいのが特徴です。これは同社のドライバーと全く同じ設計思想に基づくもので、i230は特に大きく、スイング中にフェース面が変わりにくい。スイング的に過去の人を全て切り捨てているとも言えますが、弾道の安定を目指したやさしいプロモデルです。対してBLUEPRINT Sは、現代スイングの人も何とか使える“MB系”重心距離のツアーモデル。ヘッドはコンパクトですがフェース向きを安定させる慣性モーメントを持っています。性能的にはブリヂストンの242CB+に近く、これからピンのクラブを使い始めようとする人にも良いのではないでしょうか」 次回は今どきアイアンを作るアメリカ勢、タイトリストを中心に研究していく。(取材・構成/中島俊介) 写真:小林司(クラブ)