「この街は終わりですか」…震災直後の不安に、阪神大震災経験者がくれたアドバイスは 東日本大震災の経験者を訪ねたら、能登半島地震被災地へのメッセージであふれていた(2)
▽仮設住宅でも人とつながる場を 保健師で岩手保健医療大教授の鈴木るり子さん(75) 東日本大震災発生後、全国から支援に駆けつけた保健師とともに岩手県大槌町の全家庭を回り、被災者の健康や生活状況を調べました。 津波で住民の健康管理台帳のデータが失われたため、被災者の安否や生活実態をゼロから把握する必要がありました。 能登半島地震で避難所に身を寄せている人たちは、これから仮設住宅や公営住宅に入居することになると思います。移り住んだ人たちが交流し、人とつながる場を整えることが大切です。転居先では顔見知りも少なくなり、騒音などの問題で、近所の人同士で集まり、お茶を飲みながらのおしゃべりも気兼ねしてしまいがちです。 大槌町では、仮設住宅の近くにプレハブの集会所を設置しました。そこでは自由におしゃべりをしたり、趣味の活動をしたりできる場にしました。雑巾や刺し子を作り販売するなど、生きがい創出にもつながりました。
忘れてはいけないのが、支援に当たる行政職員の心のケアです。職員も被災している中、職務に当たり、心が疲弊している人も多いと思います。復興を前に進めるには地元を知り尽くした行政職員の力が必要です。つらいときには思いを吐き出し、休暇を取りながら活動してほしいです。 復興のためには、まず健康です。保健師が被災者の家庭や避難所を回り、血圧を測りながら話を聞いてあげることで、適切な支援につなげることができます。私は長年保健師として大槌町で勤務しました。地元の方言で話せる人であれば、一層安心できると思います。