障がい者送迎車で続く性犯罪 「GPS監視」強化はもはや必須なのか?
モビリティ企業の責任
つまり、福祉・介護送迎は心と身体のケア状況にも配慮しながら、送迎しなければならない。 必要なのは、障がい者支援に特化した運送業者ではないか。 障がい者支援における運送業の役割は、冒頭で述べたように、保護者や利用者の送迎負担を軽減することだ。送迎するのは心や脳、身体に不自由がある人々だ。そのため、一般的な送迎よりもより多くの配慮が必要だ。 例えば、パニックを起こさないように配慮した運転が求められる。シートベルトを固定する際でも、細かい気配りが必要だ。また、送迎は単独の利用者の場合もあれば、複数の利用者を同時に乗せて行うこともある。複数人を乗せる場合は、 ・乗車位置 ・席順 にも配慮が必要だ。利用者同士の相性も考慮しなければならない。 つまり、福祉・介護送迎では、利用者の心身のケアを考慮しながら運転を行わなければならない。これには、障がい者支援に特化した運送業者の存在が必要だと思われる。 ただし、現在のドライバーの人手不足を考えると、運転技術と心身のケアを両立できる“スーパーマン”のようなドライバーはまれだ。そこで、 「複数の事業者が送迎車を共有」 し、人物評価に行政が関与することがひとつの解決策となるだろう。 さらに、運送業界全体で安全基準を策定し、ノウハウを共有することも重要だ。例えば、児童デイサービスの送迎バスでも、同様の事件が起こる可能性はある。GPS追跡システムやカメラを導入し、リアルタイムで監視できれば、保護者や事業者も安心して送迎業務を見守ることができる。 性被害を防ぐためとはいえ、 「過剰な対応ではないか」 といった意見もあるだろう。しかし、結論としては、これらの対策は必要だ。なぜなら、性犯罪被害は直近4年間で減少していないからだ。
性犯罪の発生状況
警察庁の「令和3年の刑法犯に関する統計資料」によると、12歳以下の子どもへの暴力的性犯罪罪種別認知件数は、2021年の953件を最新として、直近7年間で913件から1065件の間で減少していない。 障がい者への性被害の実態については不明な点が多いが、特定非営利活動法人「しあわせなみが」が2019年に実施した調査では、発達障がい者32人のうち 「35%」 が「生きにくさ」として性的被害を経験したと報告している。詳細は、同法人が法務省に提出した「障がい児者に対する性犯罪の実態」を参照してほしい。 さらに、障がい者施設の総数は増加傾向にある。例えば、放課後等児童デイサービスの事業所数は、2021年に約1万7000事業所だったのに対し、2022年には約1万9000事業所に増加している。この傾向は他の障がい福祉領域の施設にも見られる。 これらのことから、性犯罪被害は依然として横ばいであり、障がい者施設の数は増加しているため、密室の車内や障がい者送迎における性犯罪防止の重要性が高まっていることがわかる。