心房細動に高電圧電流用いた新治療、神奈川県内で開始…従来の手法より低リスク・短時間
横須賀共済病院(横須賀市米が浜通)は1日、不整脈の一つ「心房細動」の患者に高電圧の電流を用いる最新治療を開始した。高齢社会で心房細動の患者数が増える中、従来の治療法よりも低リスクで手術時間も短縮できる。各地で実施例があるが、県内での導入は初めてという。(光尾豊) 【図表】高電圧電流用いた心房細動の新治療のイメージ
心房細動は、血液が流れ込む心臓上部の左心房が1分間に500~600回(通常60~100回)の速さで震える病気。血液が滞って血栓ができやすくなり、心不全や脳梗塞(こうそく)のリスクが高くなる。動悸(どうき)や不快さを感じるが、約半数は無症状で気付かない人も多い。
国内の患者数は100万人と推計され、同病院では年間400~450件の治療を実施している。加齢や心臓病などが原因とされ、高齢社会に伴い患者数も増えている。
同病院が1日に導入した新治療は「パルスフィールドアブレーション」と呼ばれ、静脈から心房に入れたカテーテル(細い管)で肺静脈近くの筋肉に高電圧をかける。細胞を壊死(えし)させることで心房細動を引き起こす異常な電気信号を遮断するという。
同病院が導入したカテーテルは先端が五つに分かれた立体構造。手元の操作で紡錘(ぼうすい)状に細くしたり、花弁状に広げたりでき、ピンポイントで高電圧をかけられる。
従来の治療法は、筋肉をカテーテルの先から出る高熱で焼いたり、低温のガスを入れた風船で凍傷にしたりして壊死させていた。熱を使うため、周辺の食道や神経に与える影響も少なくなかった。手術時間も2~3時間を要したが、新治療では、1時間程度に短縮でき、患者への負担も小さくなるという。
同病院循環器内科の田中泰章部長は「新治療法はヨーロッパで10万例の実績があり、安全性は確保されている。熱を使わないので心臓近くの食道などを損傷するリスクも軽減される」と話している。
心房細動治療の問い合わせは、横須賀共済病院ブランド推進室(046・822・2710)へ。