「完璧な医療体制」「食事は有名シェフが監修」のはずが…夫を高級老人ホームに入れた妻が「大後悔した」意外なワケ
遠くのビッグネーム病院より、近くのノーブランド診療所
今回のケースを整理してみる。 認知症も老化も進行したものは戻らない。 終末期の患者は、有名シェフの豪華な食事を出したところで食べられない。 ご主人に残された時間もあまりなかった。 それらを踏まえれば、“完璧な医療体制”も“有名シェフの豪華な食事”も必要なかったのではないか。この老夫婦に必要だったのは、2人がいつも顔を合わせられる環境ではなかっただろうかと、私は考えている。恐らく自宅に介護サービスを入れれば何とかやっていけただろう。そう導ききれなかったことが悔やまれる。 この長女のケースは極端だが、患者やその家族が虎の威を借るように、高名な医者や、有名病院にすがる姿を時々みかける。「私は〇〇大学病院の××先生を知っているから、万が一が起きても大丈夫」だとおっしゃる方もいるが、蓋を開けて見れば、講演会のあとにちょっと話しただけだとか、同じ宴会の会場で居合わせた程度の仲であることも多い。 仮に本当に仲が良くても、その関係を信じて病院まで向かったものの門前で断られることが多いのが、今の病院の実情だ。現在の医療制度では病院ごとの役目に沿って、いかにベッドコントロールを円滑に進めるかが大切である。義理や人情で動かせるものは思っている以上に少ないのかも知れない。 そもそも終末期の医療において、有名病院や高名な医者は、(ブランド名によって安心感は得られるだろうが)それが患者の幸せな最期を迎えるための担保になるようなものではない。個人的には、「遠くのビッグネーム病院より、近くのノーブランド診療所」だと考えている。 平野国美氏の連載記事「「あのポンコツ、どうしようか」…!認知症が進み、死期が迫りつつある夫に対し、悪態をつく毒舌妻の「もうひとつの素顔」と「意外な本音」」では、「夫を看取ってから一緒に死にたい」と願っていた妻に起きた“奇跡”をリポートしています。
平野 国美(医師)
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