コインベース、情報公開請求でSECとFDICを提訴、コンサルのHistory Associatesも協力で
規制慣行の透明性を追求するコインベース
米大手暗号資産(仮想通貨)取引所コインベース(Coinbase)が、米証券取引委員会(SEC)、連邦預金保険公社(FDIC)に対し、情報公開法(Freedom of Information Act)の要請に応じなかったとして6月27日起訴した。 なお同訴訟にはコンサル会社の「ヒストリー・アソシエイツ(History Associates)」も協力している。 FDICに対する起訴状の中でコインベースは、連邦金融規制当局が暗号資産業界を銀行部門から切り離そうとしていると非難。「2年近くにわたり、SEC、FDIC、連邦準備制度理事会を含む連邦金融規制当局は、デジタル資産業界を機能不全に陥れようと、あらゆる規制手段を駆使してきた。この情報公開訴訟は、その違法なスキームにおけるFDICの役割を明らかにすることを目的としている」と述べている。 またSECに対する起訴状によれば、コインベースはSECに、イーサリアム(ETH)に対する見方についての情報を求めていた。 同社は特に「イーサリアムのプルーフ・オブ・ステーク・コンセンサス・メカニズムへの移行に関するすべてのコピーと記録へのアクセス」をSECに求めたが、SECはこの要求を拒否し、さらにはヒストリー・アソシエイツの訴えを拒否したと述べた。 ヒストリー・アソシエイツはさらに、和解済みの2つのデジタル資産訴訟関連の文書も求めている。ひとつは、2018年の訴訟でSECが「デジタル資産証券」とみなしたイーサリアムを扱うオンラインプラットフォーム「イーサデルタ(EtherDelta)」を設立したザカリー・コバーン(Zachary Coburn)氏に関するもので、もうひとつは、2017年にSECが未登録証券と裁定したENGトークンを販売したデータ暗号化の新興企業「エニグマMPC(Enigma MPC)」についてのものだ。 ヒストリー・アソシエイツは訴状にて、「数年前に和解で終結した調査の文書を保留するSECの根拠は、そもそもコインベースがコバーン氏とエニグマMPCの文書を求めた正当な目的、つまりデジタル資産業界に対するSECの激しい強制執行の根底にある法律観を理解することを挫くために仕組まれている」と述べ、「SECの妨害は情報公開義務に違反している」とした。 またFDICに対する訴状の中では、コインベースはFDICの 「ポーズ・レター」に関する情報公開請求を送ったと述べている。FDICの監察総監室(Office of Inspector General)の2023年の報告書によれば、FDICは2022年3月から2023年5月にかけて、一部の金融機関に対して暗号資産関連の活動の拡大及び詳細な情報提供を行わないよう求める 「ポーズレター」を発行し始めたという。 監察総監はその報告書で、FDICはその情報を見直す期間を示さなかったため、不確実性とリスクを生む可能性があると述べている。 コインベースは訴状の中で、「ポーズ・レターは、金融機関の暗号資産関連の活動を監督するための誠意ある努力ではなかった。FDICや他の規制当局が、デジタル資産関連企業を必要な銀行サービスから切り離そうとする計画の一部であり、その一環だ」とし、この状況が「オペレーション・チョーク・ポイント」として知られる過去の取り組みに似ていると述べた。「オペレーション・チョーク・ポイント」は、金融規制当局が銀行に圧力をかけ、特定の業界との関係を打ち切らせるというプログラムであり、物議を醸していた。 ヒストリー・アソシエイツは、OIGの報告書に記載されたすべての「ポーズ・レター」のコピーを求める情報公開請求書を提出。しかし、FDICはこれを拒否。訴状によると、FDICは後に、これらの書簡を公開することは「書簡が送られた特定の銀行に関する情報を必然的に明らかにし、金融機関とその規制当局との間のコミュニケーションの核心に立ち入ることになる」と述べている。 コインベースとSECは現在、別の法廷闘争も行っている。SECは昨年6月、コインベースが証券である暗号資産取引を扱うことで未登録のブローカーとして違法な運営を行い、連邦証券法に違反したとして、同取引所を提訴していた。 なお裁判所は今年3月、同訴訟において、SECの主張には説得力があるとしコインベースの申し立てを却下し、SECのほとんどの請求を続行させると決定したが、コインベースウォレットに対する請求については根拠がないとして棄却している。 SECは、コインベースがウォレットサービスを提供することで、未登録のブローカーとして第三者のために有価証券取引を行う事業を運営していたと申し立てていた。
髙橋知里(幻冬舎 あたらしい経済)