花咲徳栄、秋・春・夏で県内無敗達成! タイブレークで見せた”真骨頂”【24年夏・埼玉大会】
<第106回全国高校野球選手権埼玉大会:花咲徳栄 11-9 昌平(延長10回タイブレーク)>28日◇決勝◇県営大宮球場 【トーナメント表】埼玉大会 結果一覧 勝者も敗者ともに涙。ここ数年埼玉大会は埼玉のお祭りのようなゲームが必ず1試合ある。一昨年は浦和学院vs花咲徳栄、昨年は花咲徳栄vs昌平が挙がるが今回も”名勝負数え歌”に含まれるであろう。3時間35分の熱戦が始まる。 昨秋、今春、今回と決勝で3度目の対戦となる花咲徳栄vs昌平。 先発は花咲徳栄がエース上原 堆我(3年)、一方の昌平は「石井 晴翔(3年)、佐藤 立羽(3年)、山根 大翔(3年)の状態は悪くないけど、そこまでコントロールが良くないので。花咲さんはボール球を振ってくれないし見極められる。ずっと制球の良い投手で行くしかないかなって春の時点で思っていた。勝つなら今日投げた投手達が育たないと勝てないと思っていた」(岩崎監督)ということで、最速146km右腕・背番号17の鈴木 耀斗(3年)が先発し試合が始まる。 序盤は花咲徳栄ペースで試合が進む。先制したのは花咲徳栄であった。 初回、先頭の齋藤 聖斗(3年)がヒットで出塁すると、一死後、3番・生田目 奏(3年)がライト越えの二塁打を放ち一死二、三塁とする。迎える打者はプロ注目・石塚 裕惺(3年)だ。 「石塚君は良い打者。良い打者は変化球を投げられ慣れているんで、直球が来ると思わせるだけでいい。ここで逃げるとその後も勝負にならない」(岩崎監督)と昌平ベンチは勝負を選択するが、石塚は「初球を見て勝負してくれそうだったので打ってやろうと。真っ直ぐは張っていた。良い打球が打てて良かった」と、右中間へタイムリー三塁打を放ち幸先良く2点を先制する。 花咲徳栄は3回表にも二死から「タメが左足に乗っていなかったので今朝打撃練習で岩井先生に言ってもらって。ホームランはインコース高めの直球。張っていた」と3番・生田目がライトスタンドへソロ本塁打を放ち3点差をつける。 だが、3回、4回と「前の試合で指の豆が潰れてその影響が出始めた」(岩井監督)と言うように花咲徳栄・上原のストライクボールがはっきりし始める。 すると昌平は3回裏、8番・石川 來夢(3年)と1番・白坂 寛(3年)が四球を選び二死一、二塁とすると2番・大槻 真広(3年)が、ライト前タイムリーを放ち1点を返す。 昌平は4回裏にも、この回先頭の渡辺 暁斗(3年)がヒットで出塁すると、一走・渡辺が二盗を試みる。これがキャッチャーの悪送球を誘い一気に三塁へと進む。一死後8番・鈴木がきっちりと犠飛を放ち1点差とする。 迎えた5回表、花咲徳栄は9番・阿部 航大(3年)、2番・目黒 亜門(3年)が四球を選び二死一、三塁とする。ここで昌平ベンチが先発・鈴木を諦め、「うちは直球が速い投手が多いので江原 容南(3年)に関しては秋の時点で夏に投げさせることを伝えていた」(岩崎監督)と2番手に指名したのは江原であった。 だが、花咲徳栄は昌平・江原の代わり端を攻め、3番・生田目が死球で出塁し二死満塁とすると、続く石塚がレフト前2点タイムリーを放つ。さらにレフトが後逸する間に一走・生田目も生還し6対2とする。 この5回表の3点が花咲徳栄・上原の栄養になり、逆に昌平打線はやや淡白になり始める。試合は花咲徳栄・上原、昌平は江原、古賀 直己(3年)と繋ぎ8回へと進む。 昌平は8回裏猛反撃を見せる。 この回先頭の代打・畑田 育杜(3年)が死球と、続く大槻のレフト前ヒットで無死一、二塁とする。ここで3番・山根がライトスタンドへ3ランを放ちあっという間に1点差とする。これで勢いづいた昌平打線は続く櫻井 ユウヤ(2年)が右中間へ三塁打を放つと、花咲徳栄ベンチはたまらず上原から岡山 稜(3年)へスイッチする。 昌平は岡山の代わり端を攻め、続く渡辺がきっちりと犠飛を放ちついに6対6の同点とする。 試合は延長タイブレークへと進む。タイブレークの打順は先攻の花咲徳栄が6番から、一方の昌平は2番からという昌平がやや有利な状況で迎える。だが、岩井監督は「年度はじめにバットが変わって野球が変わると。より低い打球を打って、より命中率を高める。繋いで内野安打を狙う。スピードに特化してやってきた。それが最後に出た」と、ここから花咲徳栄が真骨頂を発揮する。 花咲徳栄は10回表、先頭の横山 翔也(3年)がセーフティー気味の送りバントをすると、これがサードのエラーを誘い無死満塁と絶好機を迎える。続く田端 太貴(3年)もサードゴロに倒れるがまたしてもサードのエラーを誘いまず1点、一死後、9番・阿部が左中間へ走者一掃となるタイムリー二塁打を放つ。さらに二死後、2番・目黒のセカンドゴロがタイムリーエラーを誘うなど花咲徳栄はこの回一挙5点を奪い11対6とする。 一方、昌平・岩崎監督は「誤魔化してきていた部分が最後に出てしまった」と、試合後悔やんだ。さすがにこれで決まったかと思われたが、それでも昌平はその裏猛反撃を見せる。 この回先頭の大槻が3ランを放ち、すぐに11対9とすると、一死後4番・櫻井がレフトフェンス直撃の三塁打を放つ。続く渡辺も四球で出塁し一死一、三塁とするが後続が倒れ万事休す。 花咲徳栄が昌平を振り切り5年ぶり8度目の甲子園切符を手に入れた。 まずは昌平、「力があっても勝てないと。監督の差」と岩崎監督は自分を責めたが、今大会決勝まで圧倒し、決勝も3ラン2発と脅威の粘りを見せた打線は見事だったが、最後に守備が乱れた。泣き所であったサードと今大会途中で死球を受けチームを離脱した佐久間 大翔(3年)の穴が皮肉にも際立ってしまった。また、個人的には石井や佐藤、山根が花咲徳栄打線と対峙する姿も見たかったが。 一方の花咲徳栄はこれで33年ぶり秋・春・夏の完全制覇を達成。過去の完全制覇は奇しくも1991年、今年度で退任を決めている本多監督が率いる春日部共栄以来となる。今大会はベスト16から接戦の連続。何と言ってもベスト8の西武台戦をモノにしたことが大きい。西武台戦で修羅場を経験したことが今日の決勝でも活きた。投手陣の失点の多さがやや気になるが、それを補ってあまりある石塚を中心とした打力がある。 「師匠は稲垣さんだが、本多さんに憧れて、埼玉の高校野球の師匠は本多さんだと思っているので、本多さんに並ぶためにもグランドスラムはずっとやりたいと思っていた」と岩井監督も感慨深げ。「まずはしっかり体を休めて。打線ほ本来はもう少し打てるはず。修正します」と、2度目の全国制覇へ先を見据えている。 花咲徳栄が優勝した今大会、東部地区が準決勝に3校入るなど東部地区隆盛となったように見えるが、16強で見ると東部地区5、西部地区3、南部地区5、北部地区3と南部と東部が覇権を争った形か。北部と西部の巻き返しに期待したい。またベスト8で見ると公立校が1校も入らず。来夏は公立校の躍進にも期待したい。 最後に猛暑の中、今大会もつつがなく大会を終えることができたのは高野連関係者など様々な方々の協力あってこそだ。彼らに賛辞を送りたい。