甲子園球場、ゴルフ練習場、ビニールハウスの地図記号は全て同じ!いろいろな建物に使われる「無壁舎」の定義とは
◆いろいろな建築物に使われる 平成25年図式で例示された他にも、実際の図上にはいろいろな建築物がこの記号で表現されているが、思いつくものを挙げてみれば、たとえばゴルフ練習場である。 いわゆる「打ちっぱなし」であるが、実際の地形図ではスタンドの部分をこれで細長く表現し、ボールが飛んでいくネットで覆われた範囲を「特定地区界」の細い破線で囲む。 この記号の組み合わせが「ゴルフ練習場」であるとの説明はどこにもないが、地形図を見慣れればわかる。郊外を歩いていると、ネットが張られた練習場は遠くからでも目立つので格好のランドマークだ。 ついでながら、日本の地形図に「ゴルフ場」という記号がこれまで存在したことはない。場所が広く固有名詞が表記できるので、あえて記号を作る必要もないのだろう。ただしカントリー倶楽部とかゴルフコースなどの類はCCやGCのように略記されている。 「植生界」の記号がまだ健在であった平成21年図式まではグリーンと森の境目が描かれてリアルだったのだが、今は針葉樹林記号が点在しているだけなので、地図表現として「風景の再現力」は減退してしまった。なお、ゴルフ場の外周は今でも「特定地区界」の破線が取り囲んでいる。 一部の野球場にも無壁舎記号は活躍している。東京ドームやバンテリンドーム ナゴヤ(ナゴヤドーム)のような密閉された構造のものは「独立建物」の記号であるが、阪神甲子園球場や明治神宮野球場などはグラウンド部分が空白(空地の表現)、客席は屋根のない部分も含めて無壁舎扱いとなっている。 またベルーナドーム(西武ドーム)のように、屋根はあるが側面の大半が柱である構造のものは屋根全体を無壁舎記号にしている。これなど担当者は迷ったかもしれない。 ガスタンクや石油タンクもこの記号だ。両者とも「壁」がなければ中身が漏れてしまうだろうと突っ込みたくもなるが、無壁舎記号は必ずしも「壁がない」ことにこだわっているのではなく、「ふつうの建物以外」という分類であることを考えれば、妥当な選択だろう。 石油タンクの中には「落とし蓋」タイプも多いので、「壁があるのに屋根はないじゃないか」というクレームも出そうだが(誰も言わないか……)。