【惜別・叶井俊太郎】人間が人間を喰う、阿鼻叫喚の地獄絵図。映画史上最大の問題作『食人族』はなぜ40年ぶりに公開されたのか?
漫画家・倉田真由美氏(52歳)の夫で映画プロデューサーの叶井俊太郎氏(享年56歳)が今月16日に死去した。2022年6月にステージ4の膵臓がんと診断を受け、医師から「余命半年」の宣告を受けていた。「がん」公表後も変わらず、精力的に映画製作に携わり続ける生粋の仕事人だった叶井氏。哀悼の意を表して集英社オンラインでのインタビューをお届けする。40年前に日本で初公開されたイタリア発の残酷映画『食人族』が、5月5日より『食人族4Kリマスター無修正完全版』として劇場公開された。上映禁止、フィルム没収、発売禁止など世界中で物議を醸してきた問題作がなぜ今公開されるのか。映画を買い付けてきた叶井俊太郎氏を直撃した。 【画像】映画史上最大の問題作『食人族』
40年前の劇場公開時は興行収入15億円の大ヒット映画
――衝撃的なタイトルとポスターでしたが、『食人族』ってどんな映画なんでしょうか? 叶井 まず、南米アマゾンのジャングルに生息する「食人族」の生態を撮影しに行った男女4人のクルーが失踪します。彼らを探しに捜索隊が食人族の村を訪れたところ、白骨化した遺体を発見するわけですよ。で、撮影クルーが残した1本のフィルムを持ち帰ってそれを確認するんだけど、そのフィルムの内容がこの映画っていう感じです。 ――なぜ40年前の映画を4Kリマスターで再上映しようと思ったのでしょうか? 日本初公開が1983年でちょうど40年前なので、日本公開40周年記念作品といえるじゃないですか。しかも4Kリマスターなので映像もハンパなくクリアですからね。公開するなら今しかない! しかも、5月5日の子供の日に食人族ってギャップがあっていいじゃないですか。R18+なので、子供は見れないですけど…。 ――当時、この映画が公開されたときの反響はどうでしたか? オレは高校1年生だったけど、この頃は「ジャンク」とか「モンド映画」がブームになっていて、その中で、人間が串刺しにされた『食人族』の映画ポスター見て「本物の食人族の映画だ!」と思い込んだのを憶えています。 当時付き合っていた彼女と映画館に行って「人間が人間をマジで食べるなんてヤバい!」とビビりながら興奮していましたね。彼女はずっと下を向いて見てなかったみたいで、映画終わりに行った喫茶店で別れ話をしたような気がする(笑)。 話全然変わるけど、当時はこの映画、興行収入15億円ですよ。大ヒットです。