BYD第3弾となる「シール」に試乗、奇抜さよりも真面目が際立つ正統派EVスポーツセダンの姿があった
こうした味のある走行性能はクルマの基本構造変革から得られた。ATTO 3やドルフィンでは「CTP」(Cell To Pack)と呼ぶ「ブレードセル+バッテリーパック+車体」の構造様式を採用してきたが、シールではこれを「CTB」(Cell To Body)に変更。「ブレードセル+車体」に改め、同時にバッテリートップカバーをボディフロア一体型にした。 さらに、「ねじり剛性」(ボディの強さ指標のひとつ)を40000 Nm/degと最新のスポーツモデル並に高めたボディを新規に開発。ここにCTBを組み合わせ、さらに前出の油圧可変ダンパーシステムをドッキングすることで、シール特有の世界観を走行性能の上から演出したのだ。
■シングルモーター仕様の走りは? 続いて試乗したシングルモーター仕様も、ツインモーター仕様と同じボディ構造でCTBを採用するが油圧可変ダンパーシステムではなく、減衰力固定式の油圧ダンパーになる。そのため、スカイフック的なツインモーターの走り味はないが、それでもスッと動き、さらりとした身のこなしは感じられる。 走りに死角なしのように思えるが、個人的には以下の2点が気になった。ひとつ目が「乗り心地」だ。ツイン/シングルモーター仕様ともに、スポーツ色をうたうだけあって終始、足まわりの硬さを感じる。とくに後席に乗った場合、段差での突き上げが大きめで、個人差があるもののクルマ酔いを誘発しやすい。
ふたつ目が「電動駆動モーター制御」だ。加速方向はとても滑らかで、ツインモーター仕様はタイヤの回転角度にして0.022度(従来のBYD各BEVは7.5度)のスリップを検知して駆動コントロールを行っている。 反面、アクセルをオフにした(=ペダルから足を放した)際の駆動トルクの残りは若干大きい。ドライバーとしてはアクセルをオフにしているのだから、それに応じた減速度がすぐさま発生するものと身構えるものの、そこには100ミリ秒単位ながら加速感が残ってしまう。とくにアクセルを深く踏み込みサッと戻した際に強く、長くなる傾向で、リズミカルに走るぶん、山道では気になった。