BYD第3弾となる「シール」に試乗、奇抜さよりも真面目が際立つ正統派EVスポーツセダンの姿があった
一転、シールのインテリアには欧州プレミアムブランドとは異なるBYDならではの独自色が見いだせた。ダッシュパネルやドアパネルにはバックスキン調の生地をあしらいながら、立体的な面構成と横方向に伸びる複数のラインを組み合わせ、広さと奥行きを無理なく演出している。 天井にはパノラミックガラスルーフが標準で装備されるが、このガラス面積がとても広くて開放感にあふれる。試しに後席に座ってみると、景色が頭上のすぐ上を流れていく。SUVやミニバンにもこうしたガラスルーフは見受けられるが、天井が低めでガラスとの距離が近いセダンボディでの体験はとても新鮮。そのパノラミックガラスルーフには全面を覆うソフトタイプで軽量の遮光ネットが備わり、使わない際にはトランクルーム(前50L、後400L)に折りたたんで収納できる。
■予想どおりの過激な加速力、サスセッティングも秀逸 走行パフォーマンスこそシール最大の強みだ。BEVだから速い、もはやこれは当たり前。ツインモーター仕様の0→100㎞/h加速3.8秒(シングルモーター仕様は5.9秒)と立派だ。シールではそうした数値で図られる性能はもとより、独特の走行感覚がしっかり造り込まれている。 それは市街地をゆっくり走らせているだけでも感じられ、カーブの連続する山道になると一層、強い個性として認識できた。具体的には、40~50㎞/h程度で走らせている際の振動の収束がものすごく早く、鉛直方向の振幅などは瞬間的に収まる。これは初めての感覚だ。
カーブでは少ないロールこそ感じるが、車体はステアリングをきった方向へとすぐに向き替えを開始する。これにはダブル(デュアル)ピニオンギヤ式の電動パワーステアリング効果が含まれるものの、終始スッと動き、サラリとした身のこなしは気持ちが良い。ちなみに装着タイヤは静粛性能を重視した「コンチネンタルEcoContact6 Q」で、サイズは235/45 R19、直径は694.6mmだ。 ツインモーター仕様は、メカニカル式の油圧可変ダンパーシステムを搭載する。いわゆるダンパー内部のオリフィスを動かして減衰力を連続的に調整する機構だ。昔から、どの自動車メーカーでも使われている方式ながら、シールでは車体剛性が高いこと、サスペンションの取り付け剛性が高いことなどが加わり、足もとがいつでもスッと動く。しかも、動くだけじゃなくてしっかり止まる。