グラン・パレに舞い戻った軽やかな「シャネル」、ピュアな少女のように自由な「ミュウミュウ」、最後は夢の国へ 2025年春夏パリコレ日記Vol.8
次のクリエイティブ・ディレクターが決まっておらず、今回はデザインチーム体制でのコレクションでしたが、村上さんはどう見られましたか?
村上要「WWDJAPAN」編集長(以下、村上):デザインチーム体制で初めてのコレクションだった24-25年秋冬オートクチュール・コレクションでは、司令塔の存在意義を再認識しました。「シャネル」には確固たるアイコンが存在しているし、インスピレーションの源になり得るストーリーもたくさん存在しているはず。刺しゅうのルサージュや羽根細工のルマリエ、金細工のゴッサンスといった傘下の専門アトリエはいつでも卓越したクラフツマンシップを発揮してくれますが、いずれもトップたる人間のビジョンがあって初めて生きるものなんだな、と感じました。ビジョンを持って、専門アトリエを含むさまざまな人たちと実現に向けてディスカッションとクリエイションを重ねて、「シャネル」にしかなし得ない方法で形にする必要があります。その意味において、「シャネル」のトップをカール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)やヴィルジニー・ヴィアール(Virginie Viard)の偉大さを感じたのが、前回のオートクチュール・コレクションでした。
今回デザインチームは、そんな大役を見事に果たしてくれましたね。藪野さんがいう通り、女性をさまざまな制約から解き放ったガブリエルの偉業に刺激を受けて、「飛翔」というストーリーを定め、さまざまなアイデアを、多種多様な工房と形にすることで、見るものを飽きさせないコレクションを発表したと思います。同じデザインチーム体制でコレクションに臨んだ「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」には、違和感を禁じ得ないスタイルもあったけれど、「シャネル」は全て「シャネル」らしい。ことブランドに若々しさを盛り込んだヴィルジニーへのリスペクトも垣間見えたような気がして、私は嬉しく思いました。
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