新車購入でお馴染みの光景「値引き交渉」はまもなく姿を消す!? 家電で広がる「指定価格」が新車にも導入される可能性
指定価格という制度が新車業界を救う?
この前、あるテレビ番組を見ていたら、家電(家庭電化製品)の世界では「指定価格販売」が目立ってきていると紹介していた。「指定価格」とは文字どおり、どの店へ行ってもメーカーの指定した価格で販売されていることを意味する。番組では、いままでのように価格比較サイトなどで少しでも安い店を探したり、自分で複数の店をまわり安い店を探し、さらに店頭での値引き交渉をするという手間がなくなり消費者メリットも大きいと紹介していた(もちろん指定価格は消費者も納得するものとなっているようだ)。 【画像】超モデル末期でもめちゃくちゃ売れてるホンダのコンパクトミニバンの画像を見る 指定価格対象商品は、売れ残るとメーカーが買い戻す(バイバック)ことで指定価格維持を行っているとも紹介していた。家電でも新車でも、値引きが大きくなるのは抱える在庫をできるだけ早くさばくことで、在庫管理コストを減らしたいという部分がある。在庫管理しなくてよいことでコスト削減につながり、それが指定価格に反映されているようであった。 いまどきは諸物価高騰もあり、値引き余力が以前に比べればかなり減ってきている新車販売。新車販売の世界でも近い将来、この「指定価格販売」が浸透していくかもしれないと筆者は考えている。新車販売でも値引き販売が拡大する背景は家電の世界と同じ。コロナ禍前には量販車種を中心に、納期短縮もあり、売れ筋モデルで売れ筋ボディカラー、そして選択の多いオプションを装着した仕様をディーラー個々がストックして販売するケースが多かった。 当然ディーラーとしてはいつまでも在庫として抱えているわけにもいかないので、そこで「値引き」というものが店舗ごとで状況が異なるなか拡大していくこととなり、同じ車種でも同一地域に資本の異なる複数の取り扱いディーラーがあると、個々で値引き条件が異なって、消費者はそれを比較して交渉することを可能としていた。 ほかにも想定よりはるかによく売れることで、減価償却が進んで値引きが拡大していくということもあるようだが、多くはディーラー在庫車ほど値引きが拡大しやすくなっているのが現状といっていい。 日本での新車販売は「受注生産販売」が大原則となっている。お客から注文を取った段階でメーカーに生産を発注するのが受注生産販売となる。ただ、これでは受注から納車まで時間を要してしまうので、少しでも納車までの時間を短くするために、ディーラーがあらかじめ先行して発注して在庫として持つことが当たり前のようになっていた。また、メーカーによっては売れ筋仕様を優先させた生産計画で生産を進め、ラインオフするまでに出荷先ディーラーが決まるような流れとなっているところもあると聞いたことがある。 トヨタは独特の緻密な生産及び物流管理を進めていることもあり、原則ディーラーに余剰在庫を持たせるということはしないと聞いている。そのため、他メーカー車のように「在庫だから」という理由でいたずらに値引きが拡大することはなく(値引きが拡大しているように見せるワザをセールスマンはもっているので、かなり拡大していると錯覚することはあるようだが)、それが多くの車種について再販価値の高値傾向での安定を招いている。
小林敦志