代表は28歳と30歳、「カッコいい漁師」目指し、東北の若者が決起
「海外でも稼ぐ」
会見に来賓で出席したオイシックスの高島宏平社長は「カッコいいだけでは足りない。おいしくて喜んでもらえるものを、物語とともに伝えることに意味がある」とあいさつした。漁師たちも、「外見のカッコよさ」だけを見ているわけではない。 団体のウリは、注文や納品、決済をワンストップで届けるサービス。魚種も三陸で水揚げされる鮮魚やホタテ・カキなどの魚介類、ワカメやメカブなどの海藻など幅広い。 石巻市で魚屋を営む津田祐樹さんは「物流は営業。非常に大事」と話す。「実際の配送でもインターネット販売でも、配送する人が、客と常に接する『現場』。自分たちで東京や大阪に拠点を持ちたい」と将来像を語る。また「企画提案力も課題」と指摘し、団体は商品開発を主力事業の一つにすえる。 津田さんは「調子乗っているやつと思われたくない。しっかり商売を成立させることが、かっこいい」と話す。 石巻市牡鹿半島の小さな港町で、脱サラで漁師を営む阿部貴俊さん(44)は、「食の本場ニューヨークで自分のブランドカキを売る」ことを目指す。「思いを込めて作った最高の商品を、漁師自らが海外にまで行って説明する。それも最もおいしい時期に。それってカッコいいですよね」。 若いときは海外で売るなんて夢のような話だったという。一流企業の管理職についたキャリアを捨て、「NYのオイスターバーにカキを置く」という目標を設定して漁師を始めた。 「このチームで、夢が実現できそうな予感があります」。
あこがれの職業となるように
団体は、来年度に売り上げ1億円を目指す。課題は山積している。養殖を営む漁師が多く、マグロなど遠洋漁業で活動する漁師は入っていない。地域も現在は、岩手県や福島県の漁師はいない。それでも潜在力は高い。 団体の関連会社にヤフーが入っているが、同社復興支援室の筆者は7月下旬、バイヤー向けの現地視察ツアーに参加した。その潜在力は、昼食の現場にあった。 それぞれが得意とする新鮮な魚介類が10数種類集まった。刺身や揚げ物など料理も多彩。世界三大漁場・三陸沖の「縮図」だった。これまで地域横断の連携が少ない漁師でさえ、「こんな料理法で食べたことないけど、うまいね」と声をあげ、バイヤーらが舌鼓をうった。 大震災からもうすぐ3年半。「かっこいい漁師像」は通過点でしかない。 震災の「風化」もひしひしと感じられる。しかし漁師の熱意は風化していない。代表理事の赤間俊介さん(30)は「今まで一人で苦しんでいたが、他にも同じ悩みを抱える同年代の若者が集った。漁師があこがれの職業となるよう、しっかり稼ぎ、東北から新しい水産業のモデルを作る」と話す。 漁師の思いが、一つに集まった。 (ヤフー・ジャパン/復興支援室 森禎行)