アジカン後藤正文と藤枝市を街歩き 「蔵」と滞在型スタジオの可能性をLOSTAGE五味らと語り合う
音楽家支援を目的とした、滞在型音楽スタジオ「Music Inn Fujieda」をつくります一一。ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文が創立者となって始まったクラウドファンディング。その全貌を知るべく始まったインタビューの第二回は、ゲストにDIYインディの代表格、LOSTAGEの五味岳久と、LOSTAGEのエンジニアである岩谷啓士郎を迎えた鼎談をお送りする。 【画像を見る】スタジオに生まれ変わる予定の 「蔵」 奈良在住の二人に藤枝まで来てもらい、まずは街をぶらぶら散策。元バンドマンが経営する美味しいパスタの店で腹を満たし、小さな楽器店を覗き、下校中の子供たちとすれ違い、さらには広大な蓮華寺池公園でコーヒーを。観光気分を満喫したあとには、スタジオとなる土蔵もじっくり見学。地元の空気の中で音楽と街の未来を想像すると、膨らむ夢はより具体的になっていくのだった。 ※外部配信先では記事中の画像を全部閲覧できない場合があります。その際はRolling Stone Japan内でご確認ください。
藤枝に生まれるのは、支援が目的の「滞在型」スタジオ
一今日は藤枝の街歩きから始めましたけど、どんな印象を持たれました? 五味:まぁ僕が言うのもアレですけど、田舎の街やなって。でもそこまで寂れた感じでもなく、個人の商店とかちょろちょろあって。なんか開けた、住みやすそうな街やなと思いましたね。 岩谷:僕は今回二度目ですけど、ゴッチさんにいろんな店とか連れていってもらって。いろいろ紹介してもらう中で、やっぱり地元の人たちが信念を持ってやっているお店には根付いてるものがあって。奈良もそうですけど、そういう人が活動してるのは頼もしいなって。いい街だなと思いましたね。 一本日の主題は古い土蔵と、隣接するビルです。ここでどんなことをやろうと思っているのか、まずゴッチが描くイメージを教えてもらえますか。 後藤:基本的には土蔵がレコーディングスタジオですね。ここでベーシックの録音が完結するようなイメージ。ビルの中は、3階にコミュニテイ・スペース、あとはバンドのDIYを補助するような、シルクスクリーンとかリソグラフを置くスペースを作りたいと思っていて。さらにボーカル録りができるような狭めの録音ブースと、バンドマンが格安で泊まれるドミトリーのような設備も整えたいと思ってます。で、2階はワンフロアが全部住宅になっているので、そこをゲストハウスにして、普通に旅行客とか一般の方も泊まれるような場所を作りたい。もちろん予算に限りがあるので、優先順位をつけて、まずはスタジオ、そのあとにゲストハウスっていう順番で行こうかなと思ってますね。 一バンドマン目線で、こういう話ってどのように感じられるものですか? 五味:ありがたいですよね。そういう場所。録音するにしても何するにしても、場所がないとできないことなんで。普段の活動で行く練習スタジオやと、レコーディングまでは完結できない。そこまでカバーできる場所が新しくできるのはすごくありがたい。リーズナブルに使えるなら、僕らみたいなバンドでも手が届くというか。ここはドラム、いい音で録れるんすか? 後藤:……それを実現するために今から動いてる(笑)。 五味:これでドラムの音あんまやったら「この計画何やったん?」ってことになる(笑)。やっぱ、ここでしか録れない音にならないと意味ないと思うし。 後藤:ほんとにそうだよね。 一いいドラムの音が録れるスタジオ、そうでもないスタジオって、明確に違うんですか。 岩谷:そうですね。ドラムに関しては部屋の響きが半分くらい影響するので。日本の一般的なスタジオは、わりと狭いブースで吸音もしっかりされていて、ドラムの直接音、素の音は良く録れるんですよ。ただ、ギターで言うとアンプみたいな、ドラムが部屋を鳴らすような感覚も当然あって、そこは響きが大事になってくるんですね。天井が高かったりスペースが広かったりすれば、その響きを利用した音作りができるし、できあがる音源にも幅が出る。ここの蔵は天井も高いし、そこはすごくメリットですね。 後藤:みんなドラムだけ、ベーシックだけ録って帰って、ダビングは各自好きなところでやってもいいし、続けてここを借りて全部録っても高額にならない。予定では、一日3万円でやりたいんですね。 五味:めちゃめちゃ安い。 後藤:支援を目的としてるので。そのために非営利にしていて。使用料を安くするためにNPOにしたし(今年5月にNPO法人「アップルビネガー音楽支援機構」を設立)、クラウドファンディングもやってるので。ただまぁ、他のスタジオの経営を圧迫しちゃうんじゃないかっていう心配はあるかな。 岩谷:そうですね、ダンピングみたいになっちゃう。 後藤:だから、安いから借りる、だけが動機じゃないほうがいいと思っていて。それで参加型を考えていて。ちゃんとみんなで参加して、みんなで考えて工夫しながら良くしていってほしい。そういうイメージですね。 五味:確かにね。安いから来る、それだけの人だと困るでしょうし。