斎藤氏のSNSの使い方は「極めて真面目」だった 選挙報道しないテレビがSNSになぜ苦言を呈すのか
■実直さと政策が伝わる「仕組み」 一点だけ、興味深いのは「本人のアカウント」と「応援アカウント」を使い分けていたことだ。応援アカウントのほうはスタッフが運用していたようだ。この2つのアカウントが相互にリポストしあうことで、人々の目に届く機会が増えた。 ただそもそも、斎藤氏はXを長らく使い続けていた。2021年に知事選挙に出る準備を始めた時から使っており、知事時代も県民のために投稿を続けていた。例えばメディアと議会に責められていた8月には台風の接近への注意を呼びかけている。
失職を選択した時は自分の責任を詫びながら「でも、やはり改革を止めたくない」と投稿し、ものすごく多くの反応を得ていた。意外にもリプライのほとんどは応援で、支持者の母体はすでにできていたのだ。 その後は、各所で立って孤独に街頭活動する様子を本人が投稿し、応援アカウントの投稿をリポストすることをコツコツ毎日のように続けている。SNSが上手と言っても、この愚直な投稿を毎日行っていただけだ。 そんな中に応援者も現れる。活動を始めたばかりの時期にReHacQに出演したことは大きかっただろう。思いの丈を2時間にわたって高橋弘樹氏に語り110万回以上再生されている。
Xの斎藤氏本人もしくは応援アカウントを追うだけで、彼が毎日街に立って活動していることがわかるし、リンクをたどれば彼の政策も理解できる。 もちろん入り口はReHacQだったり立花氏の暴露演説だったり、もっと怪しいデマまがいの投稿だったとしても、それらを経由して斎藤氏本人のアカウントにたどり着くと彼の真面目さ、実直さと政策が伝わる仕組みになっていた。今回の争点についてのアンケートに、政策と答えた人が多く、告発文書についてと答えた人は少なかった。そうなるような仕組みを斎藤氏陣営が作っていたからだ。
SNSの専門家も入っていたと聞くが、実に正統な手法を行っただけで、怪しい手練手管を駆使したわけではないのだ。何より斎藤氏が3年前から自身で投稿してきたことが大きい。 ■政策が見えづらかった稲村氏陣営 対する稲村氏のXアカウントは「県知事選用」なのは明らかで「稲村和美(いなむらかずみ)official」のアカウント名。スタッフが運用したとしか見えない。 さらに稲村氏の投稿からは、なかなか掲げる政策が見えてこない。noteには尼崎市時代の実績は書かれているが、県知事になってなすべきことは書いていない。11月10日のXでは政策が投稿されたが、「内部通報の検証」「公益通報の仕組み改善」「ハラスメント条例制定」「職員の新人事評価制度」など、斎藤氏がもたらした混乱の収拾が最初にある。稲村氏自身が兵庫県のために何をしたいかは、それに続いて書かれてはいるものの、斎藤退治のために立候補した意図が強く出ている。