斎藤氏のSNSの使い方は「極めて真面目」だった 選挙報道しないテレビがSNSになぜ苦言を呈すのか
■改革や今後の考えをコツコツ投稿 だが斎藤氏は世論を大逆転させる技を持つ妖術師なのだろうか? 本来はやはりパワハラを平気で行う悪人なのに、立花氏の助太刀もあってSNSで兵庫県民を籠絡したのだろうか? 私は、必ずしも斎藤氏の疑惑が晴れたとは考えていない。少なくとも100人を超える県職員が彼のパワハラ言動を認めたのは事実だし、時に声を荒げたことは本人も認めている。 だが同時に、斎藤氏のSNSの使い方はまったくトリッキーなものではない。取材に答えた有権者たちは「テレビで悪人と思っていたら、真面目に改革に取り組んでいたと知った」ので彼に投票したと言っていた。つまり、SNSを通じて実直に自分の考えをコツコツ投稿していたら、それが多くの有権者に届いたのだ。SNSはデマや中傷も撒き散らしたかもしれないが、言葉を直接届けるツールとしてストレートに機能しただけなのだ。
例えば都知事選挙での石丸伸二氏は街頭演説をYouTubeで配信し、聴衆にも投稿を呼びかける実に巧みな戦術を繰り広げた。衆議院選挙での玉木雄一郎氏はその石丸氏の手法を真似つつ、「手取りを増やす」政策の濃い中身を長尺動画で浸透させた。 そんなSNSマーケッター顔負けの手法を駆使した成功例に比べると、斎藤氏が行った手法は極めて基本に忠実で、毎日投稿を続けただけ。彼のXのフォロワー数が激増したことは伝えられたが、石丸氏や国民民主党とは違いYouTubeの投稿数はさほど多くない。
斎藤氏はコツコツ投稿を続けながらこれまでの改革や今後の考えを投稿し、それが書かれているInstagram、YouTube、ホームページなどに自然と流れる構造ができていた。と言ってもきちんとリンクが貼られているだけだが。つまりXで彼の行動を追ううちに、彼の政策にたどり着くようになっていたのだ。だから先述の有権者たちの「真面目に改革に取り組んでいたと知った」の発言につながった。手練手管を駆使したのではなく、真面目にやってきたことを真面目に投稿しただけなのだ。