摂食障害で入院した女子高生 ダイエットにはまったワケ 体重戻らず栄養チューブも…回復できたきっかけは?
通信制高校で様々な事情で入学してきた生徒たちと出会うように
あけみさんは、約3か月の入院治療を経て退院となり、早々に高校への登校を再開しました。勉強にも取り組むようになりましたが、頑張っても、頑張っても本人が望むような成績は得られませんでした。私やご両親は「そんなに無理しなくてもいいんだよ」と伝えましたが、「頑張らないと不安になってしまう」と言います。 夜遅くまで勉強しているせいか、朝起きることができず、学校を欠席するようにもなりました。食事も不規則になり、体重は再び減少していきました。なんとか2年生に進級したものの、出席日数が足りなくなり、通信制高校に移ることになりました。当初は、学校を退学することへの悔しさを泣きながら訴えていましたが、ご両親の支えもあって少しずつ気持ちを整理し、最後は吹っ切れた様子で「まあ、なんとかなります!」と話していたのが印象的でした。 転校してからは、様々な事情で入学してきた生徒たちと出会うようになりました。勉強は自分のペースで焦らず、無理せず取り組めるようになりました。そして、ずっとやってみたかったというアルバイトも始めるようになりました。いろいろな人に出会い、そのやりとりを楽しそうに報告してくれるようにもなりました。体重は一進一退でしたが、少しずつ回復し、健康的な生活を送ることができるレベルを維持できるようになっていきました。 転校して1年ほどたってから、それまでのことを振り返って「無理して生きていたな、と思った。頑張らないと皆から受け入れてもらえないんじゃないか、って不安でした」と明かしてくれました。そして、「自分は自分でいいのかも」と思うようになったといいます。この頃から面接では、将来何をして生きていくのかということがテーマになりました。 摂食障害の原因はよくわかっていませんが、あけみさんの場合は頑張りすぎるということも病気の成り立ちと大きく関係しているように感じられました。様々な人との出会いを通して、頑張らなくてもいい、ありのままの自分というものを徐々に受け入れていけるようになったことも、病気の改善に大きな役割を果たしたように思われました。 また、摂食障害は、食べる、食べないということが注目されがちですが、人にとって「食べる」とは「生きる」ことそのものであり、その意味では「どう生きていくのか」ということと深く関係してくる病気だと言えます。そんな視点も持ちながら治療や支援をしていけると良いのではないか、と思います。
宮﨑 健祐(みやざき・けんすけ)
1978年、岐阜県生まれ。大分大学医学部卒業。精神科医。弘前愛成会病院精神科医局長・外来医長。児童思春期の心の診療に長年携わる。2017年、日本児童青年精神医学会実践奨励賞。2024年、NPPR Topic Award 2023(日本神経精神薬理学会)。著書(いずれも分担執筆)に「現代児童青年精神医学(山崎晃資編著、永井書店)」「不安障害の子どもたち(近藤直司編著、合同出版)」「発達障害支援の実際(内山登紀夫編、医学書院)」など。