無自覚で悪臭を放っているかも。臭いの正体って何?(専門家が監修)
カラダから発する臭いの正体を知らぬは、百害あって一利なし! 強烈な臭いは、心や健康を蝕むシグナルかも…。その種類と原因、そして対策を、ここではっきり理解しておこう。今回は、そもそも臭いの正体は何なのかを掘り下げいく。[監修・取材協力/桐村里紗(医学博士)]
教えてくれた人
桐村里紗先生(きりむら・りさ)/内科医・認定産業医。生活習慣病から終末期医療まで幅広く診療経験を積み、予防医療の観点から臭いにも着目。著書に『日本人はなぜ臭いと言われるのか 体臭と口臭の科学』(光文社新書)など。
臭いは生存本能と直結するもの
臭いとは、嗅覚で感知できる刺激の総称である。私たちの生活にはさまざまな臭いがあり、無臭の空間は存在しない。 つまり、無臭の人などおらず、誰もが特有の臭いを持っているのだが、「あなたは無自覚な加害者かも」と桐村里紗先生は警鐘を鳴らす。 「臭いには恐るべきトリックがあります。嗅覚は動物の生存本能として養われた危険察知能力の一つで、普段と違う臭いを“やばい”と判断するようできています。 そのため24時間嗅ぎ続ける平常時の臭い、すなわち自分の臭いを脳はないものとして扱います。これが自分の臭いに気づかないメカニズム。無自覚のうちに悪臭を撒き散らしているかもしれません」
臭いの「快」「不快」は主観的なものである
臭いはその人特有の個性であると同時に、その感じ方も千差万別だという。 「人の周りには、目に見えないガスが漂っています。その正体は、口やカラダの各部位から発した複合的なものでそれこそが臭いの元。 また部位や年齢によって性質は異なります。なかでも問題となる、いわば嫌われる臭いが、口臭、汗臭、足臭、ミドル脂臭、ストレス臭、そして加齢臭です。 ただ加齢臭はそれを心地よいと感じる人がいるのも嗅覚の不思議。臭いは人の本能や情動を刺激し、脳の記憶中枢とも密接にリンクするため、潜在意識に眠る記憶をフラッシュバックさせやすい。そのため主観的な体験から、同じ臭いでも“快、不快”の感じ方が異なってくるのです」 きつい臭いは周りを不快にさせるだけではない。自分を蝕んでいる可能性も高いそう。
カラダの不調を知らせるシグナル
「例えば腸内が腐敗すると毒ガスの一種、ジメチルスルフィドを発生させ、胃を通じて口から腐った野菜っぽい臭いが出ます。これも口臭の一種。 臭い自体は病ではないため医学の分野外ですが、予防医療の観点で言えば、とてもわかりやすい不調のシグナルなのです。 それでも体臭を客観的に知る術はそうありません。だから気のおけない人と体臭の質が変わったら教え合うようにするなど、その発生を知る術があるかが重要です」
編集・取材・文/宮田恵一郎(初出『Tarzan』No.881・2024年6月6日発売)