航空の町・羽田が面白い!歩いて知る新旧の羽田
2022年3月、多摩川の最下流部に川崎市殿町と羽田空港をつなぐ多摩川スカイブリッジが開通した。これにより川崎市方面から羽田空港へのアクセスが向上。11年からは、自動車工場があった川崎市殿町3丁目地区が「キングスカイフロント」と命名され、世界最高水準の研究開発や新産業を創出する拠点として再開発が進んでいる。そんな最先端の町から昔の風情が残る穴守稲荷神社界隈までのんびり歩き、羽田の今昔を肌で感じたくなった。
スタートは京急大師線小島新田駅。10分ほど歩くと多摩川の堰堤(えんてい)に出る。左奥に斜張(しゃちょう)橋の大師橋が見え、ヨシ原が岸近くに広がっている。 川下へ進むと、右側にキングスカイフロントの真新しいビルが見えてくる。約40ヘクタールの敷地に約70機関の施設があり、健康、福祉、医療、環境などの研究開発を進めている。芝生広場や公園など、誰でも利用できる空間があるので、散策途中のひと休みにもちょうどいい。 道標に従って多摩川を離れ、キングスカイフロント交差点を左折すると多摩川スカイブリッジが始まる。片側1車線の車道を挟んで、川上と川下の両側に自転車道と歩道が設けてある。渡り始めてすぐに気付いたのは、頭上の空が広いこと。航空法による高さ制限と生態系への配慮から支柱やケーブルのない設計となり、道路照明も欄干に内蔵された。欄干の高さは大人の胸くらいしかなく、見晴らしも最高だ。 東京都と神奈川県の境界線をまたぎ、下り傾斜になると羽田エアポートガーデンが近付く。その奥に羽田空港第3ターミナルがあり、エンジン音を轟かせながら大型旅客機が旅立って行った。
大正期からの航空の町へ
歩行者用の階段を下り、多摩川の北岸に立ったら、赤レンガ調の護岸が続くソラムナード羽田緑地(遊歩道)を川上へ向かって歩く。日航機遭難者慰霊碑、旧穴守稲荷神社大鳥居を経て、穴守稲荷神社に詣でる。羽田の歴史を語る上では不可欠な古社で、江戸期に創建され現在の羽田空港B滑走路近くに鎮座していた。 「明治期には電車が開通し、鉱泉が湧いたことで、門前町は飲食店や旅館、遊郭などが集まる一大観光地になりました。境内には奉納された鳥居が4万6797基もあったそうです」とは権禰宜(ごんねぎ)の椿 拓磨さん。その数の多さからも当時のにぎわいが想像できる。大正期に日本飛行学校が開校。昭和初期には羽田空港の前身・東京飛行場が開港し、航空関係者が安全祈願に訪れるようになった。しかし、第2次世界大戦後、飛行場は連合国軍に接収され、神社は現在地へ移転した。2020年には奥之院と稲荷山が改修され、立ち並ぶ朱色の鳥居が往時をしのばせる。