ジャスパー・モリソンの名言「…が「普通」のものより役にたつことはない。」【本と名言365】
これまでになかった手法で新しい価値観を提示してきた各界の偉人たちの名言を日替わりで紹介。イギリスを代表するプロダクトデザイナーとして、さまざまな企業の製品デザインを手がけるジャスパー・モリソン。徹底的に研ぎ澄まされたデザインに宿る、モリソンのデザイン哲学をひもとく。 【フォトギャラリーを見る】 たいていの場合「特別」が「普通」のものより役にたつことはない。 良い意味で“超”普通。ジャスパー・モリソンのデザインを語るうえで、これ以上の言葉はないだろう。路面電車や家具、食器、電化製品、眼鏡、サインペン……。ジャンルを問わず、あらゆるプロダクトを手がけるモリソン。シンプルかつ実用的なデザインを徹底する根底には、「スーパーノーマル」を求めるモリソンのデザイン思想が根付いている。 「そもそもデザインとは歴史的に、産業に寄与し、大衆の快楽的消費を促し、理想をたどれば、使い方を認知しやすく、また生活がよりよくなる、という目的があったのだが、それはどうも脇に追いやられているようだ。デザインウイルスはすでに日常生活の環境を蝕んでいる。ビジネスのためには人目を引かなくてはいけないというニーズがこの病の完璧な保菌者を育てているのだ」 著書『ジャスパー・モリソンのデザイン』のなかで、近年のデザインの潮流を痛烈に批判したモリソン。目立った形や色を駆使することは真のデザインではない。時間をかけて生活に馴染むよう成長し、「普通」となったものにこそ人々を満足させるデザインが宿っているとモリソンは説いている。 もちろん、モリソンが初めから「究極の普通」を実現できたわけでは決してない。植木鉢を脚にしたテーブルや、エアコンのダクトでできたコートハンガーなど、レディメイド的なデザインを経て、着実に「スーパーノーマル」なデザインを築いていった。一方、一貫して伺えるのは、暮らしに対するモリソンの鋭い観察力。人々の生活をくまなく見つめる姿勢こそが、端正で機能美に溢れたデザインを生む源流となっているのだろう。
ジャスパー・モリソン
1959年、イギリス・ロンドン生まれ。プロダクトデザイナー。ロンドンのキングストン工科大学、王立美術大学、ベルリン総合芸術大学でデザインを学んだのち、1986年に自身のスタジオ「オフィス・フォー・デザイン」を設立する。Vitraや良品計画など各国の企業でプロダクトを発表し、ニューヨーク近代美術館(MoMA)をはじめとする著名な美術館に多くの作品が収蔵されている。
photo_Yuki Sonoyama text_Kentaro Wada illustration_Yoshifumi ...