日本一短い名字と日本一長い名字とは【ルーツがわかる家紋と名字】
まるでトンチ話のような由来を持つ難読名字
おおよそ十万種類ある日本人の名字には、全国でたった一軒しか名乗っていない希少な名字や、漢字が難しいだけでなく、漢字から予想できない読み方をする難読名字が存在する。例えば「一口」という名字は、そのまま「いっこう」と読む場合もあるが、「中に大勢の人がいる建物に出入口が一つしかないと、みんなが一斉に外に出ようとしたら出入口に人が殺到して芋を洗うような状態になる」という連想から、「いもあらい」と読むケースもあるのだ。 このほかにも、栗の花が散る頃に梅雨入りすることから「栗花落=つゆいり」という読みが変化して「つゆり」と読む名字や、鴨の脚と銀杏の葉の形が似ているため「鴨脚」を「いちょう」と読む名字がある。また、寝ている龍(臥龍)は長い岡のようだから「臥龍岡」を「ながおか」と読む名字など、トンチ話のような由来の難読名字が存在。さらに、「京(かなどめ)」「鶏冠井(かえで)」「薬袋(みない)」など、難読名字は数えるとキリがない。
日本一短い名字と日本一長い名字は?
名字を扱うインターネットのサイトや名字事典などには、「十二月三十一日」と書いて「ひづめ」と読む名字のように、文字数が多かったり変わった読み方をしたりする名字が掲載されていることがある。しかし、残念ながらこうした名字の実在を調査して明らかにした人はおらず、かなり疑わしい。 日本の戸籍に記載されている、つまり実在が証明されている中で最長の名字は、漢字5文字の「勘解由小路(かでのこうじ)」と「左衛門三郎(さえもんさぶろう)」の二つ。勘解由小路は藤原氏日野流烏丸(からすま)家の分家で、烏丸光広(みつひろ)の次男・資忠(すけただ)が名乗り始めた名字である。公家の名字のため、京都にある勘解由小路という地名に由来する。一方、左衛門三郎は埼玉県に実在する名字で、朝廷の左衛門府という役所に勤めた三郎という人物の子孫が名乗ったものと考えられる。ただし、表記ではどちらも5文字だが、読みでは左衛門三郎のほうが8文字で最長となる。 反対に、最も短い名字は漢字も読みも一文字のものになる。例えば、平安時代に『土佐日記』を記した紀貫之は、名字と名前を続けて読むと「きのつらゆき」となるが、名字単独なら「き」である。ほかにも、実在する漢字一文字かつ一文字読みの名字には「井(い)」「喜(き)」「鵜(う)」「尾(お)」「何(か)」「苦(か)」「瀬(せ)」「那(な)」「野(の)」「場(ば)」「帆(ほ)」「湯(ゆ)」などが挙げられる。