FTX元幹部ゲイリー・ワン、暗号資産詐欺事件で実刑を免れる
実刑を免れる
破綻した暗号資産(仮想通貨)取引所FTXの元幹部、ゲイリー・ワン(Gary Wang)氏は、11月20日に実刑を免れた。同氏は、FTX創業者のサム・バンクマン・フリード(Sam Bankman-Fried:SBF)氏が顧客から約80億ドルを盗むのを手伝うことになったコンピューターコードを、知らずに書いてしまった件について起訴されていた。 米国地方裁判所のルイス・カプラン(Lewis Kaplan)判事は、マンハッタンの連邦裁判所での審理で、ワン氏へ実刑判決を下さないことを発表した。同判事は、検察当局へのワン氏の協力の姿勢を称賛し、SBF氏の不正行為について、ワン氏の知った時期が他の人よりも遅かったことを指摘した。 カプラン判事は、「自分の責任を認めたことは、大いに評価されるべき」とし、「あなたの責任能力の期間は、この事件の他の被告の責任能力の期間と比較すると、極めて短いものだった」と述べた。 30代前半のワン氏は、詐欺と共謀の4つの重罪容疑について有罪を認めており、SBF氏が詐欺とその他の容疑で有罪判決を受けた裁判で、昨年、検察側の証人として証言した。 ワン氏とSBF氏は、高校生の時に参加した夏の数学キャンプで知り合った。マサチューセッツ工科大学で学んでいる時に再会し、最終的には一緒に暗号資産ビジネスに乗り出した。 ワン氏は、SBF氏とともにバハマにある3500万ドルのペントハウスに住んでいた数名のFTX幹部の1人であった。同取引所は2022年11月の破産まで、そこを拠点としていた。 昨年陪審が同氏を顧客資金の横領、自身のヘッジファンド「アラメダリサーチ(Alameda Research)」の維持、投機的ベンチャー投資、米国の政治運動への寄付の罪で有罪としたことを受け、SBF氏(32)はカプラン判事により25年の実刑判決を受けている。 なおSBF氏は、有罪判決と実刑判決を不服として控訴している。 FTXの前最高技術責任者であるワン氏は、2023年10月に陪審に対し、元上司であるSBF氏から、アラメダリサーチに特別な権限を与えるためにFTXのソフトウェアコードを調整し、同ファンドが取引所から数十億ドルを秘密裏に引き出せるようにするよう指示されたと証言した。 ワン氏の弁護士は、ワン氏がSBF氏の詐欺行為を知った後も、FTXのプラットフォームの維持に努め続けたことを認めている。 ワン氏は法廷にて「正しいことをする代わりに、安易な道、卑怯な道を選んでしまった」と述べ、「残りの人生をすべてを捧げて償うつもりだ」 と謝罪した。 マンハッタンの米国連邦検事局の検察官は、ワン氏の協力姿勢を理由に寛大な処置を求めた。また、検察官は、ワン氏が米国政府による株式市場での不正行為摘発に役立つソフトウェアを開発し、暗号資産市場向けの同様のツールの開発に取り組んでいるとも述べた。 「ワン氏は、実際に何かを行い、詐欺を働いていた際に使用していたスキルを生産的な目的に活用できる、非常にユニークなスキルセットを持っている」と、検察官のニコラス・ルース(Nicolas Roos)氏は述べた。 ワン氏の弁護士イラン・グラフ(Ilan Graff)氏は、ワン氏は当初、SBF氏が資金盗難のためにアラメダリサーチに特別な特権を与えるよう指示していたことを知らなかったと述べた。同弁護士は、ワン氏は詐欺行為から利益を得ていないと述べた。 「ワン氏は、顧客の資金を盗むために他人が利用した、いわゆるバックドアを故意に作成したわけではない」とグラフ氏は法廷で述べた。 ワン氏は、SBF氏の元側近で、カプラン判事による判決を受ける最後のメンバーである。 SBF氏の元交際相手で、アラメダリサーチの最高経営責任者(CEO)であるキャロライン・エリソン(Caroline Ellison)氏は9月、懲役2年の判決を受けた。また、FTXの別のコンピュータープログラマーで有罪を認めたニシャッド・シン(Nishad Singh)氏は先月、実刑を免れている。 ※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。 Bankman-Fried's ex-deputy Wang avoids prison time over crypto fraud Reporting by Luc Cohen in New York; editing by Jonathan Oatis 翻訳:荘日明(あたらしい経済)
あたらしい経済編集部