カカオが足りない? チョコレートのピンチが商機になりそうな企業【坂本慎太郎の街歩き投資ラボ】
『週刊プレイボーイ』で連載中の「坂本慎太郎の街歩き投資ラボ」。株式評論家の坂本慎太郎とともに街を歩き、投資先選びのヒントを探してみよう。金のなる木はあなたのすぐ近くに生えている! 【図表】不二製油グループ本社株価の値動き 今週の研究対象 カカオの高騰(不二製油グループ本社) 西アフリカの異常気象が原因で、カカオの価格が高騰している。これからチョコレートも、気軽に買いづらくなっちゃうのか!? いやいや、これが商機になりそうな会社があるみたいで......。 助手 カカオの値段が銅の価格を超えたって聞きました。本当ですか? 坂本 「カカオショック」のことですね。最近、カカオ豆の国際価格が急騰していて、3月には1㎏当たりの先物価格が、銅1㎏当たりの先物価格を初めて抜いたんです。カカオ価格の上げ幅は1年間で3倍以上ですからね。歴史的高騰ですよ。 助手 なんでそんなことに? 坂本 まずは、主要産地である西アフリカ地域の異常気象。干魃や大雨が多発してカカオ豆の収穫量が減っているんです。価格が上昇したことで投機的な取引が加速し、さらに価格を押し上げた側面もある。 助手 じゃあ、また天候が戻ればカカオ豆の価格の戻りも早そうですね。 坂本 どうかな。西アフリカ地域の平均気温は年を追うごとに上昇しているから、異常気象が続く可能性は高い。それに、カカオ栽培に見切りをつけたがっている農家が増えたという調査結果もある。生産量はしばらく低空飛行、そして価格は高止まりというのは十分ありえます。 助手 チョコレートは簡単には手が届かなくなりそうですね。菓子メーカーも利益率が低下したり、値上げで売れなくなったりしそう。 坂本 メーカーも工夫しますよ。チョコレート用油脂を使ったりね。 助手 チョコレート用油脂? 坂本 チョコレートはカカオ豆からとれるカカオマスとカカオバター、砂糖などを混ぜて作るんです。このうちカカオバターについては、パームヤシからとれるパーム油などを原料とするチョコレート用油脂(カカオバター代替油脂・CBE)で置き換えられる。CBEを使えばカカオ豆の使用量が減ってコストダウンになります。 助手 へぇー。じゃあ、カカオ豆の高騰でCBEの需要は増えるってことですね。CBEの製造企業って上場してないんですか? 坂本 してるよ。不二製油グループ本社の傘下・不二製油はCBEの大量生産に世界に先駆けて取り組んだ企業です。さらに、CBEを使って業務用チョコレートの製造も手がけ、国内トップシェア。日本のコンビニやスーパーで売られている安価なチョコレート系商品のほとんどに、同社のCBEか業務用チョコが使われているはずです。 助手 そんなスゴい企業なんですか! 全然知らなかった。 坂本 食品メーカーの裏方だから社名が表に出づらいんですよ。ただ、技術力は非常に高くて、日本の外食・中食産業を支える存在です。例えば、コンビニで売ってる冷やし中華。ゆでて時間がたった麺がくっつかないのは、不二製油が開発した水溶性大豆多糖類が表面で水分を保つから。数年前にはやった大豆製の代替肉なんてのも、同社が数十年前から研究していた製品です。 助手 知れば知るほど有望な企業じゃないですか! やはり業績は絶好調なんですか? 坂本 それがそうでもないんです。CBEの需要は好調なんだけどね。数年前、業務用チョコレートメーカー・アメリカのブラマー社を買収し世界3位のシェアを手に入れたんですが、その立て直しにてこずっているんです。同社の赤字でCBEの好調や、その他の油脂の値上げで得た利益が帳消しになっています。加えて、業務用チョコレートだってカカオ豆高騰の影響を受けるからね。 助手 うまくいかないものですね。 坂本 ブラマー社の立て直しを見守りつつ長期投資するなら面白いよ。 今週の実験結果 業績は振るわないけど、商品の独自性は高い。いい企業だと思いますよ 構成/西田哲郎 撮影/榊 智朗