奇才・田名網敬一の活動を「記憶」をテーマにひもとく。
日本を代表するアーティスト、田名網初の大規模回顧展『田名網敬一 記憶の冒険』が、8月7日から11月11日まで、〈国立新美術館〉にて開催される。 【フォトギャラリーを見る】 田名網敬一、88歳。類い稀なる色彩感覚で独創的な世界観で世界的に知られるアーティストだ。その礎にあるのは、幼少期に経験した戦争の記憶と、戦後に触れたアメリカ大衆文化だという。デビューから変わらぬスタイルで今も旺盛な創作活動を続け、近年は自身の過去の記憶や夢を主題とした作品を数多く制作している。 田名網は武蔵野美術大学デザイン科卒業。同窓に篠原有司男、赤瀬川原平、荒川修作らがいる。在学中からデザイナーとして仕事を始め、博報堂を2年で退職した後、メディアを限定しないアンディ・ウォーホルの制作方法に大きな刺激を受ける。その後は自らを「イメージディレクター」と名乗り、シルクスクリーンによるポスター、コラージュやアニメーション、イラストレーションや絵画など、ジャンルを問わず幅広く手がけるようになった。
また1960年代後半からは多くの雑誌のエディトリアルデザインを手がけるようになり、1975年には日本版月刊『PLAYBOY』の初代アートディレクターに就任した。 『田名網敬一 記憶の冒険』は、そんな田名網の初となる大規模回顧展だ。60年以上におよぶ活動を包括的に捉え直し、「記憶」というテーマのもとにひもといていく。デザイナー、実験映像作家、さらにアニメーション作家、アーティストなど、ジャンルを横断した類まれな創作活動により他の追随を許さない地位を築いてきた田名網の作品世界を体感できる貴重な機会となる。 見どころは大きく3つ。アンディ・ウォーホルから影響を受けた「ORDER MADE!!」シリーズ(1965)や、ベトナム反戦ポスターコンテストに入選した「NO MORE WAR」シリーズ(1967)など、日本の戦後文化史と密接に結びついた作品を紹介。