ユーロ2024のポルトガルに蘇る「まさかの優勝」の記憶 トルコの19歳コンビも見逃せない
【チェコ戦の苦戦が良薬に?】 しかし、先制点を奪ったのはチェコだった。後半17分、チェコMFルカシュ・プロヴォド(スラビア・プラハ)のミドルシュートが炸裂。ポルトガルはピンチに陥った。マルティネス監督はそこで直ちに、レオンに代えてディオゴ・ジョタ(リバプール)、ダロトに代えてゴンサロ・イナシオ(スポルティング)を投入した。 するとジョタがいいアクセントとなり、淀んでいた流れは活性化する。その6分後、同点弾が生まれた。しかし、時間は刻々と経過する。後半42分は、カンセロのクロスをロナウドがヘディングシュート。これがバーに当たり、跳ね返ったところをジョタが詰め、逆転弾となったかに見えた。だがVARの結果、オフサイドの判定でノーゴール。 引き分けムードが濃厚になった段で、マルティネス監督は3枚替えに打って出た。ヴィティーニャ、カンセロ、ヌーノ・メンデスを下げ、フランシスコ・コンセイソン(ポルト)、ペドロ・ネト、ネルソン・セメド(ともにウルヴァ―ハンプトン)を投入した。そしてアディショナルタイムに入った後半47分、このうちのふたりが逆転劇に絡むことになった。 左ウイングのポジションに入ったネトがドリブルで縦に切り裂き折り返すと、チェコDFがストップしたかに見えたが、そのこぼれ球をコンセイソンがゴールに叩き込み、試合を決着させた。 まさに辛勝だった。苦戦と言えば苦戦である。だが筆者が想起するのは8年前のポルトガルだった。苦戦続きのなかで勝ち上がり、優勝したユーロ2016だ。苦戦は、振り返れば良薬になった。さまざまな選手に出場機会が与えられたことで、チームはトーナメントに入って一丸となった。フランスとの決勝戦で、エースのロナウドが前半28分に負傷退場すると、チームは一層まとまって見えたものだ。 交代出場で活躍したネト、コンセイソン、ジョタらは、いまごろ上機嫌でいるに違いない。選手層を厚くさせての勝利でもあった。決勝まであと5試合を戦わなければならないチームに求められる総合的な体力を、大きく増す勝利だった。
問題があるとすれば、3-4-3だ。試合終盤は4-3-3に変更して戦っているが、これで選手のノリはそれまでより格段によくなった。オプションができたと前向きに捉えることもできるが、いまひとつパッとしなかったベースの3-4-3を心配したくなる気持ちも湧く。屋台骨はいまひとつ脆弱だ。 トルコ戦は完全なるアウェー戦である。ユベントスとレアル・マドリードに所属するトルコの19歳の両ウイングも元気いっぱいだ。対戦が待ち遠しい限りである。
杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki