馬の群れが教えてくれる、多様性時代のしなやかな「リーダーシップ」とは?
働き方や価値観が多様化する現在、リーダーのあり方が問い直されている。そんな中、アップルやナイキ、アウディといったグローバル企業で導入されているのが「牧場研修」だ。世界のビジネスエリートは、なぜ自然に学ぶのか? そこで培われるリーダーシップやビジネススキルとは? 本連載は、各国の牧場研修に参加し、スタンフォード大学で斯界の世界的権威に学んだ小日向素子氏の著作『ナチュラル・リーダーシップの教科書』(小日向素子著/あさ出版)から、内容の一部を抜粋・再編集。 第1回は、自然の中でリーダー育成を行う理由と「ナチュラルリーダーシップ」の定義を明らかにする。 ■ 自然が教えてくれる激動の時代に求められるリーダー像 現在、多くの管理職の方々が、「リーダーとは何か?」「どのようなリーダーになればいいのか?」といった悩みを抱えています。 急激に変化する時代の中で、この問いの重要性はさらに高まり、答えにたどり着く道のりは険しくなっています。皆さんも多かれ少なかれ、リーダーとしての在り方について、思うところがあるのではないでしょうか。 この難問の答えは、「自然」にあると私は確信しています。リーダーになぜ、「自然」が関係するのか、と思った人もいるでしょう。気持ちはよくわかります。でも、いったんその疑問は横に置いて、読み進めてください。 私は、10年ほど前から大自然に囲まれた北海道の牧場で、主にビジネスパーソンを対象に研修を提供しています。 牧場を研修の場として活用しているのは、日常生活では得られない多くの「気づき」が、自然の中には潜んでいるからです。 研修では、参加者を牧場の馬の群れの前に連れて行き、次のように尋ねます。 「どの馬が群れのリーダーか、直感で選んでください」 すると、たいていの人が「大きい馬」を選びます。理由を聞くと、「 大 きくて強そうだから」と言います。 次に人気なのが「黒い馬」です。理由は「色が黒いから」。 黒いとなぜリーダーなのか、根拠になっていない気もしますが、意外と多い答えです。 ほかにも「集団の先頭に立っている馬」「1頭だけ離れている馬 」「ほかの馬を追い立てる動きをする馬」なども選ばれやすい傾向にあります。 大きくて、黒くて、集団の先頭に立っていて、1頭だけ離れていて、ほかの馬を追い立てる――。 これは、リーダーのイメージを、チームを先導する人、近づきがたい人、えらい人(えらそうな態度をとる人)などと捉えている人が多いことを示しています。 既存の「優秀なリーダー像」「強いリーダー像」に縛られているのです。