「泣きながら言うしかねーんだよ!」黙秘の被疑者を罵倒する“衝撃映像”を公開 検事は「先輩の見よう見まねで覚えた」
「ひたすら公判で頭下げて、弁護士全体の品位をおとしめるようなことになってしまったと、泣きながら言うしかねーんだよ!」。ある事件で逮捕された当時の弁護士に対して、検事が行った取り調べでの発言だ。 【映像】怒鳴りまくる検察官(衝撃の映像) 取り調べの可視化は、捜査当局からの猛反対があったものの、2019年に法的に義務化された。元弁護士は、憲法で保障されている黙秘権を行使したが、検察官は「うっとうしいだけ。あなたの狙いなんだろうけども、めんどくさい。『取り調べしてすみませんでした』とか言うんじゃねーの?普通」などの言葉を投げつける。その後、弁護士は逮捕容疑については有罪が確定したが、黙秘権や人格権を侵害する不法行為があったとして、国に損害賠償を求める民事訴訟を起こした。 違法性の高い取り調べと、長期の勾留を強いられる「人質司法」に苦しめられた人は数多い。不動産会社「プレサンスコーポレーション」元社長の山岸忍氏(61)は、「全身に電気が走った。怒りの電気だ」と振り返る。山岸氏は身に覚えのない不動産をめぐる横領事件で、大阪地検特捜部に逮捕され、248日間勾留された後に、無罪判決となった。 逮捕の決め手は、同じく逮捕された部下への違法性の高い取り調べだった。部下のKさんが「あえて僕の今の心象を申し上げると……」と話すと、担当検事はそれを遮り、「あなたが今回の事件で果たした役割って、『僕は共犯になるんですか?』なんてかわいいもんじゃないと思ってますよ。自分の手柄がほしいあまりですか?そうだとしたら、あなたはプレサンスの評判をおとしめた、世界の評判をおとしめた“大罪人”ですよ」と言い放った。 山岸氏は、検察の違法な取り調べに対して、国家賠償請求訴訟を起こした。出廷した担当検事は、無罪判決について「残念な判決。有罪維持に十分だと思っていた」と述べた。これに山岸氏は「『だったらあなたたち、どうして控訴しなかったの』と言う話だ」と疑問を投げかける。 担当検事は、取り調べの手法について「先輩からの見よう見まねだ」と証言した。山岸氏は「検察の理念に合った正しい取り調べのレクチャーを受けないで、先輩の見よう見まねをしている。ずっと50~60年前のやり方が踏襲されている」と批判する。 元部下のKさんの取り調べでは、担当検事が「まただんだん悪い顔になっているよ」などと言う場面もあった。山岸氏が関与したとする証言をした取り調べ動画を、弁護団が見つけ出したことで、無罪に導く大きな証拠になった。 山岸氏は「あの組織は異常だ。視野が狭い人たちが思い込みでストーリーを作り、証拠集めする。彼らは国家権力を持っているから、そんなの簡単にできる。民間企業で育った人間からすれば、本当に考えがたい。違う生き物に見えた」と、検察を批判する。 今回の国賠請求でも、取り調べ動画が証拠として採用されたが、最も重要な「担当検事が机をたたきながら部下を恫喝するシーン」は非公開とされた。「一番ひどい場面。一方的に50分間くらい、被告人にしゃべらせない場面は、あまりにも過激なので、国が隠した。あれが国民の目に触れれば、すごいことになる」(山岸氏)。 元検事の市川寛弁護士(かなえ国際法律事務所)は、「録音・録画が始まって以降、『どんなことをしてでも自白させろ』と指示する上司は絶滅したらしい」と解説する。「若い検事は、怒鳴る取り調べはやっていないはずだ。あの検事を『昭和の取り調べ』に追い込んだのは何かの方が、問題は大きい」とした。 人権派裁判長として知られた木谷明弁護士(ひいらぎ法律事務所)は、「取り調べの可視化だって、彼らはすごく抵抗した。だけど、可視化されても平気でやっている。殴ったり蹴ったりは、できなくなった。少なくともその限度では効果がある」と指摘した。 (『ABEMA的ニュースショー』より)
ABEMA TIMES編集部