イスラエル、ゴラン高原の緩衝地帯を管理下に シリア軍が陣地離脱で
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は8日、シリアとの間にある占領地ゴラン高原の非武装緩衝地帯を、イスラエル軍が一時的に管理下に置いたと発表した。シリアで反政府勢力が実権を握ったことで、同国と1974年に合意した兵力引き離し協定は「崩壊」したと述べた。 ネタニヤフ氏は、イスラエル国防軍(IDF)に対し、ゴラン高原の占領地域から、緩衝地帯と「その近くの指揮所」に進入するよう命じたと述べた。 イギリスを拠点とする戦争監視組織によると、シリア軍は7日、緩衝地帯の内側にあるクネイトラ県の陣地を離れたという。 ゴラン高原は、シリアの首都ダマスカスの南西約約60キロメートルに位置する岩だらけの高原。イスラエルは1967年の6日間戦争の終盤にシリアから奪い、1981年に一方的に併合した。国際的には承認されていないが、2019年にトランプ米政権が単独で認めた。 ネタニヤフ氏は、シリアのバッシャール・アル・アサド政権の崩壊は「中東における歴史的な日」だと評価。「ダマスカスで独裁体制を敷いていたアサド政権の崩壊は、大きなチャンスをもたらすが、大きな危険もはらんでいる」と述べた。 また、シリアで起きたことは、同国と同盟関係にあるイランと、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラを、イスラエルが攻撃してきた結果だと主張。イスラエルとの平和な暮らしを望むシリア人に対し、イスラエルは「平和の手を差し伸べる」と述べた。 緩衝地帯におけるシリア陣地をイスラエル軍が管理することについては、「適切な取り決めが見つかるまでの一時的な防衛態勢」だと、ネタニヤフ氏は話した。 イスラエルは、アサド政権が保有していたとされる化学兵器の行方を特に懸念している。 シリアの反政府勢力「ハヤト・タハリール・アル・シャーム(HTS、「シャーム解放機構」の意味)」のアブ・モハメド・アル・ジャウラニ代表のルーツは、ゴラン高原の占領地にある(アブ・モハメド・アル・ゴラニを名乗ることもある)。同地には現在、イスラエル人入植者数千人と、占領後も残ったシリア人約2万人(ほとんどはドゥルーズ派)が暮らしている。 (英語記事 Israel seizes Golan buffer zone after Syrian troops leave positions)
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