【毎日書評】13歳の頃どんな本を読んでいた?本の奴隷にならず「自由な読書」を取り戻すヒント
きょうは僕の新刊を紹介させてください。『現代人のための 読書入門 本を読むとはどういうことか』(印南敦史 著、光文社新書)がそれ。本を読む人が減ったといわれるようになってずいぶん経ちますが、そんな状況下で本と向き合うことについて、個人的に思うことを綴ったものです。 端的にいえば、もっとも伝えたいのは、帯にある「キーワードは原体験」という部分。まずは、そのことについて触れておきましょう。 子どものころ、なんらかの本に夢中になった経験は誰にでもあるのではないでしょうか。ところが年齢を重ねると、とくに社会に出てからは、なぜだか本が読めなくなってしまったりするものでもあります。 そんな状況を克服するために重要なのは、あえて過去の境地に立ち戻ることではないか。僕はそう思うのです。具体的には、小学校低学年から思春期あたりまでの記憶を蘇らせてみることに意味があると考えているわけです。 大人になるにしたがって知識が蓄えられていくと、人は原体験を忘れてしまいがちです。でも気持ちをフラットにして記憶を少しずつたぐり寄せていけば、多かれ少なかれ、本を前にしてワクワクした記憶が蘇ってくるのではないでしょうか。 たとえば、初めて足を踏み入れた図書館の静謐な空気とか、誕生日に買ってもらった岩波書店の児童書を手にとって、「この本は大切にしよう」と思った記憶とか、ページを開いた瞬間にふわっと感じる紙やインクの匂いとか。 当時、そうした体験は多少なりとも、読書に対する欲求を刺激してくれたはずです。しかも純粋な子どもだったから、余計な理屈をこねようともしなかったでしょう。だから自然と、そこに書かれている世界に入り込むことができたのです。そして知らず知らずのうちに、それが記憶として蓄積されていったわけです。(「はじめに」より) だからといって、子どものころの感性に100%立ち戻ることはできません。けれども、個人的な体験と、そこから感じたなにかを1%でもあらためて意識することができれば、本や読書についての感じ方は間違いなく変化するはず。少なくとも、「読めない、読めない」と悲観的に考えるよりも、そのほうがずっと建設的です。 では、どうすればいいのか。もう少し踏み込んで考えてみたいと思います。