骨太方針での2025年度PB黒字化目標堅持は事実上の財政健全化先送り
2025年度PB黒字化目標は現実的でない
ところで、2025年度PB黒字化目標を維持するかどうかが、財政規律を重視するかどうかの試金石となってきた。目標堅持は財政健全化の象徴的な意味合いが強い。しかし、2025年度PB黒字化目標堅持を主張するだけでは、本当の意味で財政健全化策を支持、推進していることにはならない。 内閣府が今年1月に示した中長期の財政試算によると、2025年度のPBはベースケースで2.6兆円の赤字、成長率が上振れる成長実現ケースでも1.1兆円の赤字である。さらに2023年度のPBは30.4兆円の赤字であり、2024年度の見通しは、双方のケースで18.6兆円の赤字である。 2023年度のPBの大幅赤字状態から、2024年度、2025年度にかけて急速に赤字幅を縮小させ、2025年度には小幅赤字にまで縮小するとの見通しは、非常に不自然に感じられる。2025年度のPB黒字化目標を堅持することを正当化するように、数字を合わせているとの印象が否めない。
目標を修正したうえで成長力強化と歳出改革の具体策を早期に決定すべき
PB黒字化目標の達成は、かなり以前の段階で、その実現可能性が大きく低下していたと言えるだろう。そうした中で2025年度のPB黒字化目標を堅持することは、真の意味での財政健全化重視の姿勢ではなく、事実上の問題先送りと言えるのではないか。 真に財政を立て直し、中期的に財政健全化を回復するには、まずは2025年度のPB黒字化目標の達成が困難であることを認め、2030年度黒字化目標など、より現実的なものに修正したうえで、今度こそはこの目標を達成できるように、成長力強化と歳出改革の具体策を早期に決定することが重要だ。 今回の骨太の方針において、2030年度黒字化目標堅持で自民党及び政府が合意することは、問題を1年間先送りしてしまうことに他ならない。財政環境が急速に悪化するなか、財政健全化に向けた貴重な時間を浪費することになってしまうのではないか。 (参考資料) 「財政健全化割れる自民 「堅持」「固執反対」2つの提言 首相「金融環境に目配り」」、2024年6月8日、日本経済新聞 「自民財政論議、党内融和を優先? 再建派・積極派が提言案、議論低調 PB黒字化、従来目標を踏襲」、2024年6月5日、朝日新聞 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
木内 登英