「一万部見込める名前にする」人気ゲーム脚本家・緒乃ワサビ、商業出版実現までの≪完全戦略≫
Laplacianイズムの本作り
――ゲーム開発ということで言えば、この本はイラストもデザインもLaplacianなんですよね。 そうですね、表紙はぺれっとで、装幀デザインは上都(うえと)ですから、Laplacianをご存知の方には、お馴染みの座組ですね。 ――今回は、カバーイラスト一点のみで、口絵や挿絵がなく、ビジュアルイメージは一つしかないわけですけれども、それで意識したことはありますか? 自分がハンドリングするのは顔面の可愛さ、顔の攻撃力ですね。店頭やWebでぱっと見たときに、「可愛いな」と思ってもらうのってすごく大事だし、イラストレーターは作業中にどうしても見慣れてしまうので。逆に、視線誘導効果を狙ったレイアウトだったり、逆光的なライティングだったりという専門的なところは、表紙担当のぺれっとの中に明確なイメージができていて、自分は「いいね、最高!」と喜んでいただけです。 自分が小説を書きながら迷ってしまうみたいに、絵描きも描きながら迷ってしまうことがあります。その時に、絵を描けない自分の違和感をどう言語化して伝えるか。その印象の鮮度の高さはディレクションのときに大切にしています。絵を描かない人間の代表として、作業中の絵を見慣れてしまわないようにと。 そうやって攻撃力の高い女の子を組み上げてから、あとは内容が現代劇で、魅力的で頭のいい、でもずぼらな女の子が出て来るんだよ、と一枚絵としての情報密度を上げていく。作品の看板になるイラストを作るときはこのプロセスで作っていくことがほとんどですね。 ――章扉にも、実はちょっとした遊びというか、仕掛けがあるんですよね。ノーヒントで気付く人がどれだけいるか分からないですが。 理系の人は気付くんじゃないでしょうか。Laplacianのゲームでは、そういうちょっとした小ネタを、隙あらば挟もうとしてるんで、書籍でもそういうLaplacianイズムみたいなのを徹底できたのは有難かったですね。商品としてしっかり作らせてもらった、というか。 普段本を読まない人にも読んでもらいたいというのはあって、本を閉じている状態でも章の区切りを可視化する、というのが、装幀の上都と話して最初に決めたことでした。どのくらいで区切りが来るのか目に見えるのは、書籍のユーザビリティとして大事ですから。デザインに関しても、そういう制約条件と仕込みたい小ネタだけは指定しますが、イケてるデザインとして成立させる具体的な作業は上都にお任せです。この辺はゲーム開発会社ならではの進め方かもしれないですね。 【もっと読む】借金に追われ丸腰の素人がいきなり脚本執筆 人気ゲーム脚本家を育てた生存戦略とは? ≪インタビュー2≫ yom yom 2024年7月12日掲載
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