スリリングな岩場が冒険心くすぐる! 丹波篠山「多紀アルプス」登山ルポ
丹波篠山の市街地北側に連なる山々は、「多紀アルプス」と呼ばれており、険しい岩場が点在する急峻な山です。丹波修験道場の中心であった御嶽(三嶽)をメインに、いくつものピークを連ねていますが、初夏に咲く花狙いで、小金ヶ嶽と御嶽の二座を縦走してきました。 【写真】鎖場もあり登りごたえのある多紀アルプス登山を見る(全11枚)
風情ある城下町の背後に連なる修験道の山
篠山城の城下町として栄えてきた篠山は、街並みも美しくて、美味しいお店もいろいろあるので、とても好きな街です。周辺にはいい山も点在しているので、年に数回程度は訪れます。市街地エリアから登山口までは、かなり距離があるため、時間節約のためタクシーを利用しようと、空車を探しながら歩いていると、デカンショ祭りのいでたちをした飛び出し坊やを発見。お茶目でかわいい。 今回の登山の起点となるのは、篠山市街地から小金ヶ嶽と御嶽の間、「大タワ」と呼ばれる峠の麓にある「火打岩(ひうちわん)」という地点。ここまでのバス便はなく、やむなくタクシーを利用したのですが、この日はソロだったので、朝から懐へのダメージが大きかったです。 火打岩から、集落内の舗装道をしばらく進むと、登山道が始まります。入り口には獣除けのフェンスが設置されていました。近年はどこに行ってもこんな感じですが、このあたりも御多分に漏れず、シカやイノシシなどの獣害が深刻なのかもしれません。 緑陰が涼しい沢沿いのルートを登って行きます。早くもお目当てのクリンソウを見つけたのですが……。 ぜんぜん咲いてない。このあたりでは、開花までまだしばらくかかりそう。ちょっとがっかりしながらも、歩を進めていきます。標高600mを過ぎたあたりからちょっときつい岩尾根になります。
多紀アルプスらしい岩だらけの尾根へ
乾いていればフリクションもいい岩質で、楽しく登れます。この付近の稜線を形成しているのは、太古に海底の深いところで放散虫というプランクトンの遺骸などがゆっくりと降り積もってできた「チャート」という岩。とても硬いため、火打石に使うこともあるそうで、山麓の「火打岩」という地名はそこから来ているのかなぁと思ったり。 稜線上は眺望がよく、天気さえよければかなり遠くまで見渡せます。篠山市街地の南側には、「丹波篠山浪漫街道 源義経の道」と呼ばれている道が通っており、源平合戦のときに義経軍が通ったと伝えられています。別記事、「藍那地区里山ハイク」でご紹介したエリアにつながる古道なのです。 露岩帯が続き、ところどころ鎖場も出てきます。尾根上は木陰もあまりないため、真夏には暑いだろうなと思います。適期は初夏まででしょうか。 標高725mの小金ヶ嶽の山頂へ。山名を記した看板と道標のほか、周囲に見える山々の説明が書かれた銘板があります。 ずいぶん昔のことですが、テントを背負って多紀連山の縦走をしたときに、この山頂で1泊したことを思い出しました。朝起きたら一面の雲海が広がっていて見事でした。 名もなき小ピークをいくつも越えたり巻いたりしながら、徐々に「大タワ」へと下っていきます。岩好きさんにはワクワクルート、苦手な人にはわりと地獄なルートでしょうか。 大タワまで下ると、前回来た時にはなかったアスレチック施設ができてました。峠には広い駐車場もあり、ココを起点に小金ヶ嶽や御嶽へ、往復登山をする人も多いのかもしれません。 ココからは、御嶽への登りが始まります。大タワは標高512m、御嶽は793mなので、下った分+アルファの約300mの登り返し! 通常なら小一時間で登れる標高差ですが、以前テント泊で縦走したときは、水の入手に失敗していて、脱水で死ぬほどつらかったことを思い出しました。今回は日帰りだし、充分な水分を携行しているので楽しく登れました。 御嶽の山頂も眺望抜群。ここからは、山岳仏教が全国的に隆盛した平安時代末期~室町時代頃、多くの僧兵を擁した「大岳寺(みたけじ)」という寺の跡と、お目当ての花、クリンソウ自生地を目指します。
根岸真理