暗号資産が「通貨になる可能性は低い」:ゲンスラーSEC委員長
米証券取引委員会(SEC)のゲーリー・ゲンスラー(Gary Gensler)委員長は、ビットコイン(BTC)やその他の暗号資産(仮想通貨)が決済手段として広く使われるようになる可能性は低く、その代わり、むしろ価値の保存手段としてみなされ続けるとの考えを述べた。 マンハッタンにあるニューヨーク大学ロースクールで3日に行われたイベントで、ゲンスラー氏は参加者からの質問に答えた。質問は、暗号資産は政府から独立して作られたものだが、もし完全に規制の対象となった場合、ユーザーにとってどのような価値があるのかというものだった。 同氏は、SECは「価値中立的」であり、一般投資家は特定の暗号資産に有用性があるかどうかを「情報開示を通じて」判断することになると述べた。 同氏は「ただ、私はマサチューセッツ工科大学(MIT)などでこのようなことを教えたことがあるので言わせてもらうが、この議論は文字通りプラトンやアリストテレスの時代にまでさかのぼる」とした上で、「これは3000年の歴史だ。何百もの大国、何千もの国民国家が存在したが、地理的な経済国家ごとに1つの通貨を持つ傾向がある。複本位制を採用しない傾向さえある」と述べた。 同氏はグレシャムの法則を引用し、国家は通常、単一の通貨を望んでいると付け加えた。グレシャムの法則は、19世紀にさかのぼる「悪貨は良貨を駆逐する」という通貨原則だ。 「1つの通貨単位を望むのは、それが価値の保存手段であり、交換媒体であり、会計単位だからだ。それはすべてネットワークというとてつもない経済性を持っている」と同氏。「そのため、暗号資産のようなものが通貨になる可能性は低い。情報開示や使用を通じて、その価値を示さなければならない。証券取引所に上場している何千もの証券のなかから選ぶのと同様だ」と語った。
詐欺師、ペテン師、スキャム
ニューヨーク大学法学部のロバート・ジャクソン(Robert Jackson)教授との幅広い対談のなかで、ゲンスラー氏は暗号資産企業に対するSECの積極的な取り締まりの実績を擁護した。 ゲンスラー氏は「巡回中の警察官がいなければ、すべての法律が執行されるだろうか?」と問いかけた上で、「これは人間の本質に関わることだ。金融では、我々は境界線ギリギリのところで勝負してしまう。我々はときには強制措置を取り、人々を境界線の正しい側に戻す必要がある」と述べた。 ゲンスラー氏は、暗号資産業界には「多くの詐欺師、ペテン師、スキャム」が蔓延していると述べ、「失礼ながら、“2024年”にこの分野の指導的立場にある人たちは、現在、刑務所にいるか、身柄引き渡しを待っている」と付け加えた。 さらにゲンスラー氏は、1940年に最高裁判所が認めた「ハウイーテスト(Howey Test)」以外に追加の規制枠組みは必要ないと考えている。 「投資契約とは何かという、長年かけて信頼されてきたこのテストを暗号資産が満たすかどうか疑問に思っている人がいるなら、こう考えてほしい。誰があなたの法律事務所との契約書に署名しているのか?中心となる企業が存在し、誰かがその契約書に署名している。誰がブローカー・ディーラーのドアを叩いて、“私の特定の資産で市場を作ってもらえないか?”と頼んでいるのか?共通の企業が存在しないというのは論理に反する」とゲンスラー氏は述べた。 ゲンスラー氏は、今度の米大統領選挙がSECにどのような影響を与えるか、あるいはトランプ前大統領が再選を果たした場合に自身が退任するかどうかについてはコメントを避けた。 |翻訳・編集:廣瀬優香|画像:SECのゲーリー・ゲンスラー委員長(Jesse Hamilton/CoinDesk)|原文:SEC Chair Gary Gensler on Crypto: ‘It’s Unlikely This Stuff Is Gonna Be a Currency’
CoinDesk Japan 編集部