なぜ日本で「代理出産」が認められないのか? 不妊と向き合う夫婦が選択できる家族のカタチ
日本では、「代理出産」は認められていない
さて、冒頭で、「代理出産も技術的には可能となっている」とお話ししましたね。 みなさんは、「代理出産」について知っているでしょうか? 代理出産とは、「妻の代わりに別の女性(代理母)に子どもを妊娠・出産してもらい、生まれた子どもを依頼者が引き取る」というものです。 代理出産とひと言でいっても、その内容や方法にはいろんなものがあります。 たとえば、「依頼者である妻の卵子と夫の精子を体外受精させて、できた受精卵を代理母に移植して妊娠・出産をする方法」があります(ホストマザー)。 また、「代理母となる女性の子宮に人工授精で夫の精子を注入して、妊娠・出産する方法」もあります(サロゲートマザー)。 では、いま日本で代理出産は認められているのでしょうか? 結論からいってしまうと、現時点では認められていません。法の整備がなされておらず、日本産婦人科学会が平成15年に公表した見解でも、代理出産をハッキリと否定しています。 海外では、どうなんでしょうか? 代理出産を積極的に認める国もあります。たとえば、北米、中南米、ロシア、ウクライナなど。 そこで、日本人の夫婦でも、体外受精などの不妊治療がうまくいかなかったとき、仲介する団体の支援を受けながら、外国で代理出産を依頼する例も少なくありません。
母親は、だれになる?
じゃあ、もし日本人の夫婦が海外で代理出産を選択したとして、その依頼女性は、生まれてきた子の親になることができるのでしょうか。 まず、日本の法律のなかに、母親と子どもの関係がどのようにして成立するのかを直接的に規定したものはありません。 どういうことかというと、最高裁(昭和37年4月27日判決)によれば、「出産という事実により母子関係は当然に発生する」と理解しています。つまり、子どもを産んだ人がその子の母親だ、と考えているのです。 ですから、たとえ依頼者夫婦の卵子と精子による受精卵であっても、出産をした人(代理母)が別にいるときは、依頼者の女性を法律上・戸籍上の母として届けることはできないんです。そこで、依頼者は、生まれてきた子とのあいだで、(のちほどご説明する)普通養子縁組や特別養子縁組を結ぶことになります。 この考え方について、みなさんは違和感をおぼえますか? 依頼した夫婦の卵子と精子なら、遺伝子上は、その夫婦こそが子どもとつながりがあるんじゃないでしょうか? 代理母はお腹(子宮)を貸してくれたにすぎず、依頼した夫婦こそが、子どもの誕生をいちばんに願っているんじゃないでしょうか。 でも、最高裁は図のようにいうのです。 判決文なので、ちょっとカタい表現が並びますね。でも、内容はそれほどむずかしくありません。 ようは、「親子関係は単に個人的な問題ではなく、社会全体に関わることであり、また、子どもの福祉にも深く関わること」。だから、「一義的に明確な基準」によって「一律に」決めなければならない、としています。 そのうえで、ちゃんとしたルール(法律)がない限り、(裁判官の判断で)遺伝子上の母を法律上の母と認めることはできないのだ、としています。