JR西「ローカル線」26区間で採算性改善、全区間の赤字続く…収入百円得るために費用117倍かかる区間も
JR西日本は29日、利用者が極めて少ないローカル線17路線30区間の収支状況(2021~23年度平均)を発表した。赤字総額は約233億円。コロナ禍の収束で利用が回復し、26区間の採算性が改善したが、昨年公表分(20~22年度平均)に続き全区間が赤字となり、厳しい経営状況が続く。 【図表】JR西日本管内で収支率が低い主な路線・区間
各区間でかかる営業費用を、運賃で賄っている割合を示した「収支率」が改善したのは、小浜線敦賀―東舞鶴など。姫新線津山―中国勝山など3路線4区間は、沿線の高校の統廃合などで悪化した。
収支率が最も低いのは、昨年に続き芸備線東城―備後落合の0・8%で、100円の収入を得るために1万1766円の費用がかかった。区間別の赤字は、距離が最長の山陰線出雲市―益田(129・9キロ)が約31億円と最大だった。
JR西は2022年4月、1日の1キロあたり平均利用者数が2000人未満の区間の収支を初めて公表した。路線の維持が難しいことを明示し、沿線自治体と存廃などの協議につなげる狙いだった。平均利用者数が23年度に1000人を超えたのは、播但線寺前―和田山(1047人)と岩徳線岩国―櫛ヶ浜(1066人)だけだが、現時点で自治体との協議会があるのは芸備線と 美祢(みね)線の2路線にとどまる。
JR西の須々木淳・地域共生部次長は「話し合いに応じたら、JRが地域から手を引くという不安が自治体にある」と話す。同社は鉄道の保有を自治体に委ね、会社は運行に専念する「上下分離方式」なども念頭に、ローカル線のあり方の議論を急ぎたい考えだ。
読売新聞