初対面たった数秒で人を判断するのが妥当な理由 人間が太古の時代から培ってきた本能がそこに
■自信があることが重要視される理由 私たちは集団内の自分のポジションを守り、長期的な安全を求めている。そのため、そのとき自分がどんな集団にいようと、高い地位の人のそばにいようとするのだ。 実際の能力よりも自信があることが重要視されるのは、そのためだ。私たちが相手を信用するかどうか決めるとき、いちばんの判断材料は、その人が自分の持っている考えや情報をどのように示すか、だ。 その人が落ち着いていて何も不審なところがなければ、こちらは差し迫った危険はないと判断して緊張を解く。
ところが、目を合わせない、不安そうにしているなど不審なところがあると、ワニ脳は危険が迫っていると判断する。常に安全なところにいて危険に備えておくことが、生存の可能性を高める。だから、目の前にいる人物が不審なシグナルを発していたら、私たちは警戒し、その人物を信用しない。 人間には、このような反応が、生物学的プログラムとして組み込まれている。これを頭に入れておけば、ベストな形で人と接することができるだろう。
人と会うときには、次のことを思い出してほしい。第一印象が決まる瞬間も含め、その人と接しているあいだは常に背筋を伸ばし、両足に均等に体重をかけて立とう。また、にこやかな表情でアイコンタクトをとること。そして手のひらを見せるなど、オープンなジェスチャーを使いながら、親しみをこめた口調で話そう。 ある大企業の講演会に参加したときのこと。その講演がはじまったときに見た講演者のふるまいは、いまでもはっきり思い出せるほど強烈に頭に焼きついている。
■第一印象と振る舞いで判断される その講演者の女性は、コミュニケーション・マネージャーだった。彼女は聴衆の前に立ち、腕時計を見下ろしながら緊張した声で言った。「ええと、もう時間は過ぎていますね。はじめないと」。そして開いたドアの向こうに目をやると、こう訊いた。「まだ席についていない人はいますか?」 それから、「今日は何人かゲストに来ていただいていますが、その前にお話ししたいことがあります」と言った。彼女はゲストのほうを見向きもせず、歓迎の挨拶をするわけでもなく、ただゲストが座っているほうに手を差しのべると、何かを払いのけるようにさっと振った。