【鶴ケ城の入場料】財源確保し魅力向上を(1月10日)
会津若松市の国史跡若松城(鶴ケ城)跡で、天守閣などを改修する財源の確保が課題になっている。市は2025(令和7)年度、天守閣の入場料引き上げに向けた検討に着手する。鶴ケ城は市のシンボルであり、本県の宝でもある。観光資源としての魅力を高める上でも、よりよい方策を探ってほしい。 市は2023年度、史跡若松城跡内施設長寿命化計画を策定し、鶴ケ城天守閣をはじめ、史跡内にある茶室「麟閣」などの施設の現状を調べた。劣化や損傷の程度を踏まえて改修費用を試算した結果、2024年度から50年間で約15億円かかることが分かった。改修にはこれまで、天守閣などの観光施設の料金収入や若松城整備等基金を充ててきた。ただ、2024年3月末現在の基金残高は約1億円で、近年の資材価格の高騰などを踏まえれば、十分には賄い切れないとみるべきだろう。 史跡を管理する会津若松観光ビューローによると、天守閣の入場料は現在、大人410円、小人150円となっている。松本城(大人700円、小人300円)、大阪城(大人600円、小人無料)、姫路城(大人1000円、小人300円)、熊本城(大人800円、小人300円)と比べ、決して高くはない。松本城と大阪城は今後、値上げを予定しているという。鶴ケ城天守閣には年間約60万人が登閣する。仮に100円値上げすれば、6千万円の収入増となる計算で、安定的な財源確保につながるだろう。
一方で、城は市民の心のよりどころであり、値上げに伴い、足が遠のくことがあってはならない。市民向けの登閣デーを催すなど、これまで以上に配慮が求められる。教育旅行への影響も考慮しなければならない。県外からの学校数はここ数年、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故前を上回る水準で増えてきた。こうした動きに水を差すことがないよう料金設定する必要がある。 鶴ケ城は1965(昭和40)年の再建から今年で60年の節目を迎える。ハード面だけでなく、市が掲げる「SAMURAI CITY(サムライシティ)」を体験できるソフト面の充実も欠かせない。魅力ある鶴ケ城を後世にいかに残していくかを考える一年にしたい。(紺野正人)