バスケ×サッカー“93年組”女子代表2人が明かす五輪の舞台裏。「気持ち悪くなるほどのプレッシャーがあった」
代表での立場の変化を感じた2度目のオリンピック
――お二人にとってキャリア2度目のオリンピックとなった東京五輪では、チーム内での立場や責任はどのように変化しましたか? 岩渕:年下だった時はある程度自分のことをしっかりやって先輩についていけばいいのですが、年上になると、いい意味でも悪い意味でもいろんな経験をしてきた中で難しさを感じるようになりました。「代表はこういう場所」ということを若い選手たちに示して引っ張らなきゃいけない、と思いながらも、2016年以降は監督が代わって世代交代が一気に進んで、上の年代の選手がかなり少なくなってしまって。そこはものすごく苦労したところです。結局、東京五輪でも結果が出てないから「うまくいった」とは言えないですけどね。自分は若い時のほうがラクだったなと思うし、そういう経験をしたからこそ「若い選手は何も考えなくていい」と思っていたので、若い選手に対するうらやましさもありました。 町田:私も東京五輪の時はリオの時とは立場が全然違って責任を感じながらプレーするようになりましたね。でも、高田真希キャプテンがしっかり引っ張ってくれていたので、みんなでついていった感じでした。サッカーは人数が多い分、若い選手が一気に入ってくると難しさもあると思いますけど、バスケットはベンチに入れるのは12人で、若い選手が入っても1人、2人くらいでガラッと変わることはあまりないので、そのまとまりやすさはあったのかなと思います。 岩渕:ちょっとうらやましく聞こえます(笑)。
銀メダルで観客が一気に増加。「選手が責任を背負う必要はない」
――なでしこジャパンはロンドン五輪後、アカツキジャパンは東京五輪後に、メダルを獲得した影響もあって人気の高まりを感じました。代表の活躍が人気に直結することは、リーグでどのように実感していましたか? 町田:東京五輪の後は一気に観客が増えましたが、そこから徐々に減ってきています。バスケットよりも前に、サッカーやソフトボールがオリンピックでメダルを獲得していたけど、やっぱり「観客数が一気に上がって、その後は下がってしまう」という話を聞いていたので、バスケットもそうなるんだろうなと予想はしていました。そうならないようにみんないろいろと考えて実践していますけど、それでも人気が継続していかないっていうのは、どうしたらいいのかなと。 岩渕:私も、2011年のワールドカップ優勝を経験して、その後バーっと観客数が増えて、そこからは減っていくことしかなかったし、(2021年に開幕した)WEリーグも思うようにお客さんが入らない現状を見て、代表の結果が人気に直結しているなと感じます。ただ、そもそも日本で女子スポーツが盛り上がっているかと言われたら、難しい部分があると思います。バレーボールはテレビでやっていて盛り上がっているなと思うんですけど、どうしたら継続して盛り上げていけるのかはいつも考えます。だけどまだ正解は見つからないですね。 ――集客の起爆剤という意味では現状、オリンピックの代表チームにかかる部分が大きくなりますね。選手たちのコメントからも、その責任感が感じられます。 岩渕:引退して改めて思うのですが、現役時代は「日本の女子サッカーのために」「競技を盛り上げるために頑張らなきゃ」って思って、メディアにもそう言っていたし、ものすごく自分自身にプレッシャーをかけていたなと。ただ、引退した今、外から代表を見る立場になって、二十歳ぐらいの選手が「女子サッカーのために結果を残せるように頑張ります」って言っているのを見るのは、少し胸が苦しくなります。結果を出すためだけにやっているわけではなくて、きっと自分が好きで楽しいからサッカーをやって、その結果代表選手になれたのに、それ以上に責任を背負う必要はないんじゃないかな?と。やっている時は自分も苦しかったなって、やめてから感じましたから。だからこそ、選手たちには結果ばかりを意識しすぎることなく、オリンピックでプレーできることを思いっきり楽しんでほしいです。 ――町田選手は現役選手として、そういうプレッシャーや責任感を感じる場面も多そうですね。 町田:東京五輪の後はいきなり注目を浴びる機会が増えて、なぜか私だけ取り上げられることも多かったので、大会後はそのプレッシャーに苦しみましたね。オリンピックを見てからリーグの試合を見に来てくれる人も多く、代表で見せたプレーを見せなきゃいけないというプレッシャーもありました。チームが違うから役割も違うんですが、見に来てくれる人は代表の私しか知らないから、それ以下のことはできないし、「結果を残さなきゃいけない」っていうプレッシャーを自分で自分にかけていました。