【試乗】安定性と旋回性が共存。トリシティ125はコーナリングも楽しい!
リーンしやすく、リーンした時に抜群の安定感がある!
フロントが2輪で、フロントサスは片側2本の合計4本。構成パーツが増えているので、車体を押し引きした際にはフロント回りに重さを感じた。ただ、ハンドル切れ角は通常のバイクと大差なく、押し引きしている時の取りまわし性は悪くない。 車体を直立させている状態でハンドルを切ろうとすると、フロントは2輪で接地しているので通常のバイクよりハンドル操作はかなり重く感じる。また、直進している時はフロント2輪の接地幅も変わらないので、通常のバイク以上の安定性が感じられる。ライダーが修正舵を当てなくても高い直進安定性が発揮されるので、街中を走行しているだけでも疲労が軽減されているのが分かる。 ところが、車体を曲がりたい方向に少し傾けると、フロント2輪もその傾きと同調するので、車体はスッと向きを変えていく。この時の車体の動きは通常のバイクのようの軽くてスムーズなので、コーナリングも非常にスムーズにできる。それでいてフロントは2輪で接地しているので、コーナリング中の姿勢は通常のバイク以上に安定している。 フロントからスリップダウンする感じがしないので安心してコーナリングができ、倒し込みもスムーズなので積極的にコーナリングを楽しみたいと思える。抜群の直進安定性と超スムーズな旋回性を両立しているのがLMW機構の特徴で、変速もATのトリシティ125はバイク経験の少ない人でも扱いやすいコミューターになっていると思った。
LMW入門として一度は乗っておきたい
トリシティ125の操作性は通常のコミューターと変わらないが、直進安定性ははるかに高く、滑りやすい雨の日や荒れた路面でも安心して乗ることができる。旋回性のよさはスポーツモデル並みだが、コーナリング中の安定性も通常のバイクよりトリシティ125のほうが高く感じられた。前後サスの衝撃吸収性もよく、とくにフロントはタイヤでも衝撃を吸収しているのが伝わってきて、乗り心地もかなりいい。こうした安定性とコーナリング性の両立がLMW機構ならではの特徴で、それを誰もが操作しやすいATで実現し、既存のバイクユーザー以外にも、乗りやすいコミューターとして訴求しているのがトリシティ125だ。 ただ、LMW機構は重量増にもなっていて、機構の大きさは足下やフロントトランクのスペースを減らしている。また、発進時にも車重が影響し、スロットルを開けてトルクが立ち上がってきも、ワンテンポ遅れてから加速力が発揮される。車体が動き出せば、その後の加速の伸びはスムーズで、交通の流れをリードする軽快な走りもできる。 押し引きの重さ、収納力の少なさといったコミューターとしてのデメリットはあるものの、抜群の安定性とコーナリング性を両立した走りの楽しさはLMW機構を持つトリシティ125ならではのものだ。ヤマハらしいスポーティな走りをATで楽しみたいという人には、まずはトリシティ125をおすすめしたい。
【2024年型ヤマハTRICITY125主要諸元】
・全長×全幅×全高:1995×750×1215mm ・ホイールベース:1410mm ・車重:168kg ・エンジン:水冷4ストロークSOHC4バルブ単気筒124cc ・最高出力:12PS/8000rpm ・最大トルク:1.1kgf ・燃料タンク:7.2L ・変速機:Vベルト式無段/オートマチック ・タイヤ:F=90/80-14、R=130/70-13 ・価格:49万5000円
小川浩康