<一貫の春>センバツ・広島新庄 勝つための工夫を 迫田守昭監督(74) /広島
第92回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)への出場を決めた広島新庄に、アマ球界屈指の名将がいる。社会人野球の都市対抗でも三菱重工広島を強豪にした迫田守昭監督(74)で、広島新庄では2007年から采配を振る。総合力で勝つ野球を身上に、無観客での開催を前提とした準備が進むこの春のセンバツに向けても「試合では持てる力を100%発揮したい」と話す。 【動画】センバツ出場校、秋季大会熱闘の軌跡 迫田監督は三菱重工広島で捕手を務めたのちコーチを経て監督に就き、1979年に初出場した第50回都市対抗野球大会で初優勝の偉業を成し遂げた。監督を退いた後は母校の広島商に戻り、春夏の甲子園に2度出場。広島新庄でも14年のセンバツをはじめ甲子園へは3度導いた。 そんな華麗なる経歴の持ち主だが、06年秋に広島新庄の投手コーチに就いたときは驚いた。「野球部員は、学校に『野球をやりに来る』ものだと思っていた」。部員は20人ほどだったが、授業や自習のため練習には5、6人しか集まらない日もあったという。 選手たちを褒めて伸ばす指導に切り替え、たとえ対戦相手に個々の能力で劣っても、勝てる工夫を凝らした。攻撃では「2ストライクから5球粘る」の目標を掲げた。粘れば甘いコースへの失投もある。打ちあぐねる投手の球数が増えれば、交代の可能性もある。そうした積み重ねが試合にも出た。2019年の秋季県大会では広島商との2回戦で九回に追いつき、延長サヨナラ勝ちを呼び込んだ。 「うちには技術的に素晴らしいスーパースターはいないが、力が劣っていても勝つために何をすべきか選手たちが分かってくれば、強いチームになれる」 センバツは、主催者による11日の運営員会で開催の可否を最終判断する。無観客でも野球ができることに喜びを感じながら、全員で勝利を取りに行く姿を見せてほしい。迫田監督はそう考えている。【手呂内朱梨】