まもなく開幕「CES 2025」--ロボットに自動車、注目のテーマを予想
読者の皆さんの多くは、きっと新しい年の始まりをのんびり過ごすことだろう。だが、米CNETのわれわれは2025年の年明け早々から、世界最大級のテクノロジー見本市「CES 2025」に参加することになっている。想像を超えるようなロボットから次世代の自動車、最先端のテレビまで、2025年のわれわれの生活を形作るテクノロジーを、間近から詳しくお伝えする予定だ。 この記事の画像をすべて見る CES 2025の公式日程は米国時間1月7日~10日だが、われわれはその数日前から現地入りし、オープンよりひと足早く展示品を見たり、報道関係者限定のプレビューに参加したりする。同4日には早くもいくつかのサイドイベントが予定されているほか、6日は記者会見が続く一日となり、サムスン、ソニー、LGといったテクノロジー業界の最大手が、世界に向けて最新の製品を発表する予定だ。 CES 2025のトレンド 「CES 2024」では、透明ディスプレイから、住宅のエネルギーを自給させる新しいオフグリッドソリューションまで、期待の高まるトレンドが登場した。それらのトレンドがこの1年間でどう推移してきたか、そして2025年にはどんな新しいことが待っているのかを見守る時期がまた巡ってきた。CESの柱になりそうだとわれわれが見込んでいるテーマは、以下のとおりだ。 AIとAIエージェント CES 2024は、どこもかしかも人工知能(AI)だらけで、めまぐるしく移り変わるテクノロジーのクールな例もあった一方、見かけ倒しも少なくなかった。CES 2025では、AIを組み込んだ製品において、そのAIがもはや単なる営業向けの宣伝文句や仕様上のお題目ではなくなり、実際に違いを生みつつあるという明白な実証例を求めることになるだろう。 CES 2025で大きな話題になるのは「エージェンティックAI」だろうと、われわれは予想している。スマートアシスタントをデバイスのインターフェースの最前面に押し出す仕組みであり、テクノロジー各社が積極的にほのめかしている概念だ。一部では実験も進んでおり、最終的にはアプリに取って代わると示唆されている。もっとも、それが未来の形だと確信できるほどの出来栄えにはまだ達していない。 スタンドアロン型のAIデバイスが増えて意表を突かれる可能性もある。CES 2024では、「rabbit r1」とHumaneの「Ai Pin」が予想外の注目を浴びたものの、結局は期待外れに終わってしまった。むしろ、テレビやスマートフォン、除雪機、歯ブラシといった既存の製品にAIが組み込まれる可能性の方が高いだろう。 2024年には、AI専用ボタンが付いた「Copilot+ PC」も登場した。2025年も同じ傾向が広がるだろう。「Screens Everywhere」戦略を打ち出しているサムスンは、新しい洗濯機や乾燥機、さらにはビルトインオーブンにAIを搭載する予定だ。またLGも、AIセンサー技術の車載を進めている。狙いは、「搭乗者に必要なことを感知してそれに対応するとともに、車内の環境も最適化する」ことだ。 最新のチップ CESに足を運ぶときには、テクノロジーの急速な進歩を目撃することを期待するものだが、既知の製品の次世代機となるものが多いことにも気づかされる。その進歩は、チップメーカーの成果がなければ実現していない。われわれが最もよく使うデバイスの性能と機能を増強する技術は、チップメーカー各社によって設計されている。 CES 2025では、NVIDIAとAMDが新しいチップを発表すると見込んでいる。あわせて、両社とパートナー関係にある各社からも、そのチップを搭載するデバイスが明らかにされると予想される。NVIDIAの場合はAcer、ASUS、Razer、レノボ、Dellなどのパートナー企業だ。 NVIDIAの最高経営責任者(CEO)であるJensen Huang氏が基調講演に登壇する予定で、そのときに次世代のCPUおよびGPUについて発表があるとみられている。ゲーミングノートPCのユーザーにとっては朗報だろう。同社の次世代GPU、「GeForce RTX 50」シリーズに関する情報はオンライン上ですでに出回っており、AcerのPC「Predator Orion」シリーズに関するリーク情報で、さらなる詳細が明らかになった。 一方、AMDは「RDNA 4」技術を搭載したGPU製品を発表することをすでにほのめかしている。Qualcommに関しては、年次の大型発表イベントを去る10月に開催したばかりだが、CESに向けて隠し球を用意しているのも、同社では定番だ。 自動車技術の競争も激化 この10年間で、自動車はCESのセンターステージへと着実に進出してきた。電気自動車(EV)はテクノロジー業界でも注目カテゴリーの1つであり、CES 2025では未来のEVと輸送に関する最新のコンセプトが披露されるだろう。 多くのトップ自動車メーカーが2025年のCESにも出展し、インフォテインメントシステムの進化から、まったく新しいEVまで、あらゆるものをお披露目する。現代自動車(ヒョンデ)は、世界初となる、運転席から助手席まで広がるフロントガラス全面ホログラフィックディスプレイを発表する予定だ。一方BMWは、「Panoramic iDrive」ディスプレイを初披露する。本田技研工業(ホンダ)は、EV「Honda 0シリーズ」の洗練されたプロトタイプ2車種をすでにチラ見せしており、CES 2025でそれを公開することになっている。 老舗のテクノロジー企業も自動車業界のシェア争奪戦に参加しており、ソニーは「PlayStation 5」を組み込んだソニー・ホンダモビリティの「AFEELA」の新モデルを公開するとうわさされている。そうした次世代自動車テクノロジーの多くを支えているのは、Qualcommなどのチップメーカーであり、その各社も製品のアップデートをCES 2025で発表する可能性がある。 自動車業界の交通面に関しては、自動運転車の世界展開として東京でテストを始めると発表したばかりのWaymoが、独占基調講演で今後のビジョンについて概要を説明するとみられている。 米CNETのエキスパートによる予想 米CNETでテクノロジー記事を担当するベテラン記者の多くも、現地ラスベガスに赴く予定であり、奇妙で奇抜な、素晴らしい製品やテクノロジーを期待しつつ準備を進めている。ほとんどの記者が初参加ではなく、CESに向けて大きな期待を抱いている。各記者による予想のいくつかを以下に紹介しよう。 David Katzmaier記者--パーソナルテクノロジー担当エディトリアルディレクター CESに参加し、テレビに関するレビュー記事を書くようになって20年以上が経つ。CESは、いわばスクリーン業界のスーパーボウルだ。CES 2025ではテレビ画面の大型化がさらに進み、2024年に最大だったTCLの115インチをさらに上回る可能性もある。筆者が好きなのは、最先端の実用性とクールさを備えた奇抜なテレビのコンセプトで、間違いなくクール志向の方が強い。例えば、LGの透明なテレビとか、C SEEDが発表した23万3000ドル(約3660万円)からの折りたたみ式マイクロLED TVなどだ。CESは、筆者のようにいろいろな技術を見過ぎて鈍くなった記者さえも驚かせる、オタク好みの斬新なディスプレイ技術が披露される場でもある。これまでにも、巻き取り式ディスプレイのテレビ、折り曲げ可能なスマートフォン、EL量子ドット、最先端の仮想現実(VR)、ディスプレイ内蔵のコンタクトレンズなどを目撃した。CES 2025が、予想もしない未来のテレビ技術で、またしても筆者の意表を突いてくれることを期待している。 Lisa Eadiccico記者--モバイル担当シニアエディター 筆者にとっては、次が7回目のCESとなる。これまでと同様、(いろいろな方向に折り曲げられるフレキシブルなスマートフォン画面のような)面白いコンセプト、さまざまな方法で健康状態を測定できる新しいウェアラブル、あるいは台所から車までさまざまな場所に追加されるディスプレイなどが披露されると予想する。とはいえ、ここ2年にわたって、テクノロジーの流行語と明確に認められたAIが、2025年も引き続き話題の中心になると思われる。2024年の時点でも、各社が新しい携帯型デバイスから車、ホームロボットまで、ありとあらゆるものにAIを取り込んでいる様子を垣間見たが、2025年にはAIがもっと注目を集めるに違いない。マーケティングを強化するためにAIという単語を使用するだけの誇大広告を乗り越えて、実際にAIを使ってその機能やサービスを実質的に改善できる製品につなげられるかどうかが課題になるはずだ。 Eli Blumenthal記者--モバイル担当シニアエディター 幸運にもCESに参加できるようになって何度目になるのかはもう忘れてしまったが、たくさんの突拍子もないコンセプトに刺激を受けられるという期待は少しも変わっていない。その多くが、2025年のうちに購入できる(とりあえず手頃な価格で購入できる)製品として形になることはほぼないとしてもだ。2024年には、色の変わるBMWや、ヒョンデの電動エアタクシーといった型破りのアイデアが登場し、サムスンからは透明のマイクロLEDディスプレイなども紹介された。 そうしたアイデアが、2024年のうちに消費者の手元に届いたかというと、答えはノーだ。しかし、その点が常に重要なわけではない。筆者にとってCESは、研究開発というカーテンをめくって、世界有数のテクノロジー企業が何に取り組んでいるのか、裏側の最新情報をのぞき見る場なのだ。それらのコンセプトが近いうちに最終製品になって店頭に並ぶことはないかもしれないが、これから何が出てくるかを知るチャンスがつかめる。CES 2025も例外ではなく、奇想天外なコンセプトカーや、高品質あるいは大型になった巻き取り式・折りたたみ式ディスプレイが数多く出展されるだろう。AI、AR(拡張現実)、VRといった略語で表されるテクノロジーが本格的に組み込まれた製品もたくさんお披露目されるはずだ。 Katie Collins記者--欧州担当シニア記者 筆者は何年にもわたってCESに参加してきたが、その多くはロボット関係の技術に触れてきた。卓球をするロボットのこともあれば、「カード・アゲンスト・ヒューマニティー(不謹慎なフレーズを組み合わせてネタにするカードゲーム)」をプレイするロボットだったこともあり、2025年にはどんなロボットを拝見できるのか今から楽しみだ。筆者が本当に見たいと願っているのは、AIをロボットに組み込む技術の発展であり、ロボットが見世物の段階を抜けて実用の段階に、できることなら家庭で使える段階にまで進化することだ。そうなれば、長年苦労して取り組まれてきた大きな飛躍が実現する。健康と美容に関するテクノロジーが発展し、今以上に自分たちでウェルネスをコントロールできるようになるという変化も楽しみなことの1つだ。例えば、これまでには、AIを利用して肌の状態を診断し、お手入れを提案してくれるものなどがあった。サステナビリティーとアクセシビリティーの改善にテクノロジーを活用する企業にも、引き続き注目したいと思っている。 この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。